プロレス好きの私だが、白状すると女子プロレスはあまり好きではない。
決して馬鹿にしている訳ではない。女子プロレスで使われる技は、極めて危険なものが多く、よく受け身がとれるものだと感嘆するほどだ。ただ、私があまり好まない最大の理由は、重量感のなさだ。
身体の構造からいって、如何に鍛えようと筋肉の付き方に男女差は確実に出る。分厚い筋肉に脂肪の鎧をまとった男性プロレスラーに比べると、女性プロレスラーは、どうしても線が細い。
これが迫力のなさにつながっていることは、試合をみれば明白であった。ただし、それは女子プロレス側にも自覚はあったと思う。ならば、女性なりの迫力を追求した結果が、あの難易度の高い技の攻防であったと思う。
その方向性は間違っているとは思わない。だがヘビー級の男性プロレスラーの肉弾相打つ凄まじい試合を見慣れた私には、女性プロレスラーの試合には、どうしても物足りなさを感じざるを得なかった。
そんな私が認めていた数少ない女性プロレスラーがダンプ松本であった。太り気味の体躯ではあるが、それが確実に迫力につながっていた。単なるデブではなく、かなり鍛えていることも分かる体つきであった。
悪役キャラであることも、気に入った一因ではある。当時人気であったクラッシュギャルズを痛めつけるヒール(悪役)といて、リングの上で暴れまわっていた。
特にその体重を十分に載せてのラリアットは、相手選手を一回転させてしまうほどの威力であり、実に迫力があった。やはりプロレスの魅力は、肉弾相打つ重量感である。私的には、ダンプ松本は十分合格点であった。
そんな時代に描かれたのが表題の漫画だ。まだ男性名を名乗っていた塀内夏子が描いた短編女子プロレス漫画だ。長いこと探していたのだが、ようやく見つけた。短編集「サーカス・ドリーム」の中に収録されていたので、気が付くのが遅れた。
塀内夏子は、少女漫画家としては目が出ず、少年漫画で花開いた。何故だか知らぬが、女性を描くよりも男性を描く方が上手い漫画家でもある。その塀内作品のなかでも、珍しく女性を主役にもってきて成功した作品なのです。ただし、恋愛要素まったくなしの、女子プロレス漫画。
正直、技の攻防の場面では、格闘技経験のない塀内だけに、いささか瑕疵が目立つ。だが、迫力の点では十分楽しめる作品となっている。ただ、この短編集自体、私はハードカバー版を買っているが、既に絶版だと思うので入手は難しいと思います。