あれま、乗り過ごしたぞ。
まァ、いいや。終点まで行って、折り返して戻ればいいさね。そう呟くと、私は再び、頁に視線を戻して読書に埋没した。この山場を読むことを、途中で中断してなるものか。
そんな訳で、帰宅が20分ほど遅れたが、後悔はない。後悔するとしたら、最後の山場を読まずに下車して、自宅まで我慢することだろう。
ここまで私を熱中させた本は、そうそうないと断言できる。おまけに、読み終わって3日もたっていないのに再読している始末である。
再読してみると、正直アラが見えないでもない。特に最後の科白は、いささか違和感を持った。でも、いいさね。少なくても嫌いな科白ではない。この世は割り切れず、合理的でもなく、正しいとも云いかねる。
それでも、少しでいいから正義を求めたい。謎の女アレックスが求めた正義、追いかける警部が求めた正義。そして、この本の読者が求めた正義。多分、どれも少しづつ違っているのだろう。
読むべき価値のあるミステリーであることは間違いないでしょう。私は十二分に楽しみました。多少の欠点には目をつぶっても楽しめると思いますよ。