ヌマンタの書斎

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豊洲問題がつきつけるもの

2017-02-24 12:52:00 | 社会・政治・一般

大企業と政府の癒着は、今に始まったことではない。

それは分かっていたつもりだが、今回の豊洲の土壌汚染問題ほど、それを強く思い出させてくれる事件は、そう多くないと思う。

未だ全てが判明した訳ではない。現在のところ、石原都政において、なにやら不透明な取引があったかのように報じられている。だが、東京湾の埋め立て事業と、その埋立地の活用は、数十年前から始まったものだ。

若い人は知らないのも無理ないが、あそこは元々浅瀬であり、豊かな漁場でもあった。それを高度成長時代に漁民を立ち退かせ、替わって急速に都市が拡大し、排出される多量のゴミの処分場として、埋め立てが始まった曰くつきの場所である。

つまり、元々ゴミ臭い土地である。その土地を東京ガスが工場として使用していたのだが、有害な産業廃棄物が土壌深くに沈殿していたことは分かっていた。この土地を東京都が買い受ける話が出たのは、石原の前、青島都知事の頃であったようだ。

実務に疎い青島氏がどこまで関与していたのかは不明だが、やはり核心部の話は石原氏の代であることは間違いあるまい。クリーンなイメージのある石原慎太郎ではあるが、そこは長年永田町に巣食う魑魅魍魎に囲まれてた政治家である。

私事ではあるが、かつてうちの事務所に毎年、電話をかけてくる石原都知事の秘書と名乗る人間がいた。正しくは元・私設秘書であり、既に石原氏とは切れていたはずである。

しかし、師匠であるS先生は、この元秘書の電話に出ると、幾ばくかのお金を用意して、実際に会ってそのお金を渡していたようなのだ。近所だからと言葉を濁していたが、過去になんらかの仕事の依頼をしたことがあるようであった。

S先生は最後までその内容を明らかにしなかった。でも20年近くそばで仕事をしていた私は、おそらくあの件であろうと思っている。それは、法制外の厄介事をある役所にねじ込むことで、成功させたはずだ。おそらく、その石原の元私設秘書はその仕事に絡んでいたのだろうと思う。

そのことは、私がS事務所に入る前のことであり、30年近く前のことだ。お金を渡すといっても、サラリーマンの小遣い程度である。なんとなく、お情けでしている印象があった。その元・私設秘書は私らスタッフには高飛車であったが、S先生の前では卑屈な態度であったと思う。

口が堅いS先生は、この件に関して愚痴もなにも云わなかった。ただ、なんとはなしに、石原慎太郎という政治家を見限っているかのような印象があった。私ら税理士は、政治連盟という税理士会とは別の組織を作って政治献金をしているが、その大半は自民党の政治家(現在は少し違う)であった。

これはその目的からして、与党政治家でなければ、税制に関する意見陳情は意味がないので当然ではある。だから税理士政治連盟を通じての政治献金には、S先生も協力していた。が、いくら薦められても役員にはなろうとしなかった。政治とは距離を置きたい気持ちが強かったのだろう。

私には、その一因が石原慎太郎にあったように思えてならなかった。私の独断と偏見ではあるが、私はこの政治家を、自らの手を汚さない人だと思っている。綺麗ごとなら、堂々と大声で主張する。しかし、表だって口に出来ないような下世話なことになると、途端に後ろ向いて他人に任せるタイプだ。

政治の世界、とりわけ民主主義国家における政治の世界は欲望の巣窟である。最大多数の欲望を実現することを政治の目的としている以上、政治家の元には素朴な希望から、泥臭い欲望まで有権者の意向が集約される。

そして、石原慎太郎という政治家は、断れないが、綺麗ごとではない陳情があると、それを私設秘書に回していたのではないかと、私は疑っている。そして、事が終わると、その秘書の首を切って、身の回りを綺麗に整えたのだろう。

なんとはなしだが、S先生がその元・私設秘書に小遣いを渡していたのも、そのあたりの事情を斟酌してのものであった気がしてならない。そうでもないと、石原に対して醒めた態度をとっていたことの理由にならないように思う。

話を戻すと、石原・元東京都知事は、豊洲の東京ガス工場跡地の売買について、同じような姿勢で臨んだのではないかと想像している。おそらく、周囲の誰かに実務的な細かいことは任せて、事を済ませた。

石原がこの取引により、如何なる利益、便益を得たのかは不明だが、自分の手を汚さないで、他人任せにして押し付けるこの男らしいやり口だと思う。

いや、石原だけではない。清廉潔白を売り物にしているような政治家にはよくあることだ。それを見抜くのは至難の業なのかもしれないが、見抜けなかったことへの最終責任は、やはり有権者に帰する。この先、どれだけの税金が浪費されるのか、考えるだけでウンザリする。

もしかしたら、知っていながら報じなかった、あるいは知ろうとする努力を怠った新聞、TVの責任は重いと思います。

コメント (1)
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