肩から力が抜け過ぎているぞ。
街娼の子供として生まれ、父を知らず、まともな母も知らなかったストリート・キッズであったニールは、掏りに失敗して捕まったが、そのグレアムに探偵の素質を見出されて、私立探偵の助手として育てられる。
やがて、その才を愛でられて活躍の場も、ロンドン、香港と広がり、アメリカに戻り荒野で愛する人と出会い、彼女から「貴方の子供が欲しい」と云われて戸惑い、父になることを恐れる青年ニール。
そのニールの最終話とされているのが、表題の作品なのですが、過去の4作品と比較すると、格段に緊張感に乏しい作品となっている。あまりにコミカルというか緊迫感に欠けるのだが、実際はかなりシビアな話。
保険金詐欺が物語のバックボーンなのだが、人の生き死にが左右されるほどの大金に右往左往する登場人物たち。ニールも例によって危険な場面に追いやられる。殺されてもおかしくない、危機的状況に陥るニール。
それなのに緊迫感に欠けるから、おもしろ、オカシイ作品となっている。ニールも、いつまでもストリート・キッズでいられる訳もなく、この物語もこれで打ち止めは、相応なのかもしれない。
重厚なミステリーを期待したら裏切られること請け合いですが、軽い気持ちで楽しみたいのなら、洒脱な翻訳と相まって、なかなかの佳作だと思いますよ。あれほど熱中したニールの物語ですが、妙な終わり方をしたことが、なんとなく納得できるから不思議です。
でも、やっぱり物足りない。どうしても、「犬の力」と比べてしまうのが哀しい。次は「犬の力」の続編を読みますかね。