ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

犬を飼う 谷口ジロー

2017-02-27 12:09:00 | 

やはり、犬は飼えないのかな。

幼い頃、祖父母の元に居た時に、私の傍にはいつもペロがいた。小学校に入った時に、父が貰ってきたルルは、いつも私の傍らにいた。犬が傍にいる幸せなら、私は十二分に知っている。

だが、その後、家庭の事情で引っ越すことになり、公団住まい故に犬を飼えなくなった。私にとって犬とは、庭を駆け回るものであり、庭に穴を掘っちゃうものでもある。

だから、庭のある家に住まぬ限り、犬は飼わないと決めていた。都会は犬にとって優しい場所ではない。舗装された公園で、排便した後で後ろ足を掻いて便を隠そうとする犬の姿を見るたびに胸が痛んだ。犬にとって、土の大地は絶対に必要なものだと思う。

数年前、母を亡くし、空き家になった実家に住むことを考えた時、私の脳裏には再び犬を飼うことばかり考えていた。だが、この年で一軒家に一人で住むのには躊躇わざるを得なかった。なによりほぼ40年以上、鉄筋コンクリの家に住み続けていたので、木造家屋には馴染めなかった。

なにより、犬を家で寂しく待たせる生活は、決して犬を幸せにしないことを思わざるを得なかった。私が飼う以上は、犬にも幸せであって欲しいのだ。

それが叶わぬ以上、私は犬を飼うべきではないと考えている。

表題の作品は、先月亡くなった漫画家・谷口ジローの代表作の一つ。おそらく実話から描かれた作品だと思う。郊外に家を買った若い夫婦が、犬と共に人生を過ごし、やがて夫婦は中年夫婦となり、元気に庭を駆けまわっていた犬も老いを迎えた。

最後まで、自宅で犬を看取ろうとした夫婦の日常を描いただけの作品であり、ただ、それだけなのに私はこの作品を読むと胸が熱くなる。白状すると、私が犬を飼うことを断念した理由の一つは、この作品を読んだからだ。

私はあまり家に居つかない人間だ。家が嫌なのではなく、外で過ごす時間が長いだけ。ただ、それだけなのだが、その暮らしを数十年続けてきたので、家から離れない犬を看取る自信がない。

正直、悔いはあるのだが、私は犬を責任もって最後まで面唐ンれないと思う。だから犬は飼えない。覚悟は決めたのだが、それでもやっぱり寂しい気持ちは拭えない。

犬を飼ったことがないが、それでも犬を飼いたいと考えている方は、この作品を必ず読むべきだと思います。それだけの価値はある作品だと思いますよ。

コメント (5)
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