私が十代の頃から、アクションスターであったジャッキー・チェン。
誰だって年を取るし、若い頃と同じアクションが出来る訳はない。だから近年のジャッキーのアクション・シーンには失望を感じることが少なくなかった。
だから、あまり期待せずに映画館に足を運んだのだが、意外と好印象。
これは悪口ではないのだが、ジャッキー・チェンはアクション俳優に徹した、あるいは徹せざるを得なかった俳優だ。ご存じの方もいるだろうが、彼自身は満足せず、文芸作品にも挑戦している。
しかし、世界のファンは圧倒的にアクション俳優としてのジャッキーを求めていた。それが分かったからこそ、敢えて彼は徹底的にアクション俳優を演じた。
だが内心の葛藤は相当なものであったのだろう。表題の作品で、彼は「家族も持たず、仕事だけに囚われた人生だった」と寂しげにしていたが、私には「アクション映画だけに囚われた人生だった」と感じてしまった。
ある種、達観したのかどうか分からないが、この映画でのアクションはさほど激しいものではなく思う。だけど、円熟した凄味というか、笑いと驚愕とのバランスが良く、老齢のアクションスターの演技として、十二分に楽しめた。
カンフーアクションに笑いの要素を取り込むことで、世界中からの人気を得たジャッキー・チェン。アクション映画の革新者といっても良い大スターだと思うが、それゆえに年齢による衰えが辛かった。
それでもアクション映画に拘り、CGやワイヤーアクションなどは使わずに、従来の手法で映画を作る。最近の派手なハリウッド映画に比すると地味に感じますが、反面やりすぎでない映像に安堵感を覚えたのも確かです。
あまり宣伝等はないようですが、観て損のない映画だと思いますよ。