ヌマンタの書斎

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国立大学の失墜

2019-12-09 10:58:00 | 社会・政治・一般

仕事柄、いろいろな会社を訪れる。

私の仕事は決算書の作成、試算表のチェック、税務申告書の作成と会計税務面に集約されている。だが、これらの仕事を十分にするためには、会社側の内部事務がしっかりしていることが重要になる。

ところが、案外とこの事務面がしっかりとしていない会社が少なくない。申告に必要な書類を持ってくるように言っても、その書類がどこにあるか分からない。そもそも該当の書類の存在自体を把握していないこともある。

実にだらしないと思うのだが、案外とこんな会社でも創業数十年なんて老舗もある。ただ、断言できるのだが、このような事務面でたらしない会社は、決して大きくなれない。

いくら本業で、顧客から高い評価を受ける質の良い仕事をしていても、会社内部の事務処理が不適切な会社は、仕事を大きく展開できない。無理にやれば、必ずどこかしらで綻びが出て失敗する。

昔、帝国陸軍の参謀本部で事務処理に辣腕を振るった瀬島龍三が、戦後中堅商社の伊藤忠に入社して、最初に取り掛かったのが陸軍方式の事務処理の徹底であった。これにより、関西の中堅商社であった伊藤忠は、全国規模どころか世界的に上位に入る大型商社へと躍進の基盤を作ったとされる。

地味で目立たないが、、事務処理をしっかりとしておくことは、組織にとって非常に重要である。今、これが危うくなっている組織があるのをご存じだろうか。それが日本各地にある国公立大学である。

現在、各大学での事務部門に対する苦情が増えている。なにせ正規採用の事務職員は極めて少なく、大半は短期雇用の非正規職員である。この非正規職員は3年で解雇となり、次の新人がその業務を引き継ぐ。

その結果、ベテランの事務職員は年数を経る度に減っていく一方で、若いが経験の乏しい事務職員ばかりが仕事を担当することになる。

報道等を丁寧に読んでいれば気が付くと思うが、大学関係の稚拙なトラブルが時折報じられる。ひどいものになると、大学入試の合否の手紙の発送間違いなんてものもある。若い受験生の人生にもかかわる重大なトラブルだと思うのだが、大学側の対応は鈍い。

だが、本当に恐れなければならないのは、大学の研究レベルの低下である。

近年、日本はノーベル賞をかなり頻繁に受賞している。その研究者の多くは、日本の国立大学出身である。ノーベル賞は基礎科学の研究に対して贈られる。経済界に需要の多い応用科学とことなり、基礎科学は収益性に乏しく、しかも研究の成果が出るのに時間がかかる。

単に優秀な科学者のアイディアだけでなく、そのアイディアを実証する基礎的な研究の繰り返しであるから、研究室のみならず資金面、事務面での支援が欠かせない。その事務面が危ういのである。

縁の下の力持ちとして、ベテランの事務職員がいたからこそ、時間と手間のかかる基礎科学の研究は、滞ることなく進められた側面は確かにある。しかし、3年で辞めさせる非正規事務職員の増加は、教育機関、研究機関としての大学の業務に支障をきたすことになるのは目に見えている。

そろそろ本気で、非正規事務職員の問題に対峙しないと、本当に日本の基礎科学の研究は危うくなると思いますよ。

コメント
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