システムは高性能であればあるほど、必ず予期せぬ欠陥がある。
これは、コンピューターから鉄道管理システムなどの民生品はもとより、軍事の面でも不変の原理である。だから、今回、秋田に配置予定の新型ミサイル防衛システムであるイージスアショアも相当に欠陥があるだろうと予測している。
市場に出すことを前提とした民生品は、販売前にテストを繰り返すことにより、その欠陥を見つけ出して改善する。しかし軍事用品は、戦場で使うことが前提である。もちろん事前のテストを繰り返すが、本当の意味での実戦使用ではないため、どうしても全ての欠陥を発見することは難しい。
はっきりと云えば、軍事用品は実際に戦場で使ってこそ、その真価も欠陥も分る。実際、過去の名戦艦、名戦闘機、名戦車などは、開発当初は欠陥だらけで、実戦での運用を通じて改善し、使いやすい有効な武器と進化した。
これは軍事史を通読していれば、当然の常識なのだが、日本では軍事に疎い方が平和を愛する者であるとのオカシナ視点があるので、軍事音痴が偉そうに軍事を語ることが多い。
最近でいえば、気鋭の言論人として取り上げられる某大学講師であったの牧田がそうだ。
イージスアショアについて、役に立たないどころか日本にとって危険なものだと盛んに主張している。一読すると、さも論理的に記しているのだが、よくよく読むと、矛盾点があるし、なにより初めに結論ありきの論であることが分る。
当然であろう。この方、反原発、反米軍基地、反安倍政権の結論あっての論者である。自分が信じる結論の正しさを立証するための理屈を並べているに過ぎない。ただ、そこそこ知識があるので、軍事に疎いと彼の論はもっともらしく読めるから厄介である。
今さらだが、はっきり書くが、自衛隊の役割の一つは、在日米軍及び米軍基地の守備である。アメリカが日本列島に基地を置くのは、アメリカの防衛戦略の一環である。
もちろん自衛隊の隊士たちは、日本を守るのは我らであるとの強い自覚をもっている。それは東日本大震災などの天災時に証明されている。しかし、政治の論理は冷徹である。
敗戦国である日本は、太平洋戦争の敗戦後70年が経っても、未だアメリカ軍のくびきから逃れられない。それを屈辱に思うのは良いが、アメリカ軍の配下の地位にあるからこそ、経済再建に専念出来たのも事実である。
経済的に豊かな戦後の日本は、アメリカ軍の保護下にあったからこそ繁栄を享受できた。その代償として、アメリカ軍の配下であることを甘受せねばならない。
冷戦が終結してアメリカは、世界各地の点在するアメリカ軍を四か所に集約した。その一つが日本列島である。政治的に安定しており、その高度な技術力から兵站基地として役立ち、豊かな経済力ゆえに資金面でも役に立つ便利な拠点である。
在日米軍基地といと、すぐに沖縄を思い浮かべる人がいるが、それはあまりに短慮に過ぎる。青森の三沢基地の中にある通称「ゾウの檻」と呼ばれる防諜施設は東アジア最大のスパイ施設である。また青森は車力にある自衛隊内のXバンド・レーダー施設は、アメリカ本土防衛には不可欠のものである。
そこで今回、青森に近い秋田の自衛隊基地内の施設として設置されるイージス・アショアである。率直に言って、日本の防衛のためというよりも在日アメリカ軍施設防衛の役割を担っているのではないかと私は疑っている。
なにせ、自衛隊のイージス艦との連携にせよ、アメリカ軍のブラックボックスである装置を通じてしか機能しないのだ。もちろんアメリカ軍との連携は非常に重要なので当然ではあるが、やはりアメリカの為だと勘繰らざるを得ない。
しかも当初から欠陥が予測されるイージスアショアのシステムは、アメリカ軍が事実上その主要部分を握っているのだ。
日本人としては、いささか忸怩たる思いが生じるのは当然である。でも冷静に考えれば、それだけ機密だらけの重要施設を日本に設ける以上、アメリカはその拠点防衛に真剣であるとも認識できる。
秋田市が、日本が戦場になると騒いで、その設置に反対する市民たちがいるが、この人たちは初めに反対ありきの原理主義者だ。日本にミサイルを撃ち込むことは、自動的にアメリカの防衛本能を刺激する。なぜなら日本列島はアメリカの重要な防衛拠点だからだ。
もとより日本の国防は、アメリカありきで構築されている。アメリカとの同盟関係が健在である以上、イージスアショアの設置も受け入れざるを得ないでしょう。それとも隣のバカ大統領のように反米姿勢を打ち出しますか?アメリカと敵対関係を望むのでしょうか。
多分、欠陥だらけでしょうけど、イージスアショアの設置は、日本の国防と平和に役立つ存在だと言わざるを得ないですね。