あまり好きではない漫画家ではあるが、気に入っている作品もある。
一つは以前取り上げた「大いなる完」だ。あの金権政治家と揶揄された田中角栄をモデルとした政治家の生涯を描いた作品である。本宮自身は最後が上手くまとめられなかったと反省していたが、私には十分納得のいくものであった。
もう一つ、私が気に入っているのが、今回取り上げた「春爛漫」である。漫画家である本宮ひろ志の半生を描いたものである。決して優秀な子供でもなく、家庭に恵まれたわけでもなく、さりとて喧嘩が抜群に強かった訳でもない、ただの少年。それが本宮ひろ志であった。
やもすれば、コンプレックスの塊と言われても仕方ない。実際、本宮の漫画を読むと、強烈なエネルギーを感じることが少なくないが、その源泉はコンプレックスであることが容易に分かる。
往々にして劣等感を強く抱え込んだ人間は、つまらない生き方をすることが多い。一緒にいて楽しい人間ではない。だが、そのコンプレックスを堂々と認め、前面に出してしまえば、それは唯のコンプレックスではなくなる。生きるため、前に進むためのエネルギーとなる。
本宮漫画の主人公たちが共通して持つ強烈なエネルギーは、まさにこのコンプレックスから生まれたのだと、この作品を読めば分かる。
私は気に入って読んでいたが、実はヒット作ではない。銀次郎や金太郎といったメジャーなヒット作と比べるとあまりに地味な作品なのだ。でも、作品としての完成度はヒット作以上ではないかと思う。
なぜなら、漫画家本宮ひろ志の半生を、気取らず、見栄もはらず、浮「ほどに率直に描いているからだ。この人生の歩みあってこその漫画家なのだと誰もが理解できる作品。
本宮ひろ志の漫画が好きでない人こそ、読んで欲しい作品だと思います。
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