入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’19年「晩夏」 (6)

2019年08月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 高遠を過ぎ、杖突街道を離れて笠原という古い集落まで来ると、伊那谷の夜景が一望できる。今では一面、黄金色に色付き出した水田が広がっているが、王朝の時代、ここは「笠原の牧」と呼ばれた牧場があった土地だと伝えられている。そのずっと西の一段低い天竜川の流域に人々の暮らしの中心があり、これから日が短くなれば、そこで暮らす人たちの多様な営みが生み出す夜景を目にしながら帰ることになる。
 そんなことを考えていたら突然、経ヶ岳の中腹に当る闇の中に、大きな光の輪が拡がった。南箕輪村の大芝高原から打ち上げられた夏を送る花火だろう。次々と夜空に煌く光の花を眺めながら家路につくということになったのだが、やはり去年も同じ光景に出くわしたことを思い出し、その偶然を喜んだ。
 真夏、浴衣を来て、団扇でも扇ぎながら見ればまた別だろうが、秋風の吹く中で眺める花火は、何とも儚く、寂しく見えた。短い夏を送り、ひたすら秋の来るのを待っていたつもりだったが、夏が逝くのを惜しむ遠い記憶が、消えていく寸前の花火の光芒のように、まだ残っていたのかも知れない。




 
 ようやく何日ぶりかで青空を拝むことができた。澄んだ深い空に見えるのはすじ雲だろうか。成層圏に近い1万メートルを超えるあの高空には、マイナス20度の薄い大気があるようだ。空ばかりではなく、もうどこにも夏の気配はない。コスモスが咲き、虫の声がして、間もなくサンマが食卓に上るようになる。
 この夏、入場数最大だったJALNECが帰る。

 営業案内 「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」およびその(2)です。下線部をクリックしてご覧の上、どうぞご利用ください。
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