ずっと気になっていた第4牧区の牛たち、下からの支援を受けられないことが分かった。それで、種牛を含む36頭を一人でBの牧区へ移すことにした。豚コレラなどの問題があって、畜産課の面々も忙しかろう、仕方ない。
AとBの間には約500メートルほどの森があり、牛はここを抜けて初めてBの草地に着ける。本来なら、牧区の中に入って、森の中を牛を先導するのだが、例の性質(たち)の悪い種牛がいるから、それができない。思案の末、取り敢えず道路上からクラクションを鳴らし、それで反応を試してみることにした。牧柵はほぼ道路に沿って設置されている。
すると上手いことに、和牛5頭とホルスが2頭がつい先ほどまではあった電牧の仕切り線まで降りてきた。すでに、電気牧柵は10メートル位を取り払って開けてある。しばらくためらっていたが、まず和牛が動き出した。その上有難いことに、その中に問題の暴れ種牛は、どこかで"仕事"でもしているのかいなかった。
軽トラの中から声を掛けながら誘導し、途中からは牧区内に入り先導した。いつ動きが止まるかと気を揉みながら、普段よりか長く感じる500メートル余りを引っ張った。Bの放牧地が目の前に広がって見えると、牛たちは小躍りして喜び、走り出した。褒美に塩をやると、これまた喜びを精一杯に見せてくれた。まずまずだと、日ごろの調教の効果に満足した。
もう一度AとBを区画している境まで戻ると、今度は種牛も含む牛の群れがいた。軽トラを反転し、そこでマッキー奴に声をかけながら誘導を始めると、すぐに牛の群れは動いた。種牛にとって、確かその森の中を通るのは初めてのはずなのに残臭ででも分かるのか、最初の7頭の誘導の時よりもかなり積極的に動く。今度は牧区の中には入れないから、終始車の中から声を出す。途中で数えたら14頭いた。これだけ移動させることができれば、もう万々歳である。後は種牛に任せればいい。長い間の胸のつかえが取れた。
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