入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’21年「秋」(8)

2021年09月09日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 牛を探しているうちに、まさかと思いながらもこんな林の中に来てしまった。この疎林を右に行けば小さな流れがあり、その向こうから御所平の放牧地が始まる。水でも飲みに来たのだろう、こんな所にも牛の足跡がある。霧が深すぎて、3頭ばかり確認できない牛がいるのだがそれを諦め、大分心細くなってきた牧草の状態を見ながらモミの木の間を急登して、雷電様へ行ってみることにした。
 霧雨は止もうとしないし、放牧地は牛の姿も分からない乳色の闇に閉ざされて、幻想の中を彷徨っているような気がしてくる。上衣は防水だけれど下は普通のズボンで、時折霧雨が自分の重さにこらえきれないのか激しく降ってきたりすると、遠くに停めてきた軽トラックのことが悔やまれた。

 それが昨日の午後のことで、今は午前4時、激しい雨音は少しも治まらない。やはり、闇の中で、雨に濡れながらじっと耐えているだろう牛たちのことが気になる。草も大分乏しくなってきていた。

 昨日は、小学校時代からの畏友KM子さんとご主人のS氏が里の家に持って来てくれたキノコでスープを作った。コムソウと言ったと思うが、それを出汁にすれば美味いスープができると教えてくれたからで、それなりに手を加えたら、なかなかの味のものが出来上がった。冷えた身体には身に沁みて大変有難かった。
 それがまだ残っていたのをこんな夜とも朝とも言えぬ時間に温めて、気の滅入る雨音を聞きながら味わっている。美味い。バターをたっぷりと塗ったバゲットでもあればなおいいだろうが、それは空腹のいたずらで普段はあまりパン類は食べない。スモークサーモン、ローストビーフ、レタス、トマトなどなど、ホテルの厨房から豪華なサンドイッチを関連するデパートやレストランへ運んでいた若かったころのアルバイト時代を思い出す。
 また、一段と雨音が激しくなってきた。ムー。どうもこの狂った雨はさらに雨脚を強め、それが午前中一杯は続き、雨が止むのはきょうの午後になりそうだ。異常気象が異常でなく常態化してきている。いくら文句を言っても始まらないが、雷電様で雨乞いしていた人たちとは逆に、この雨の止むのを天に祈りたい気持ちになってくる。

 外に出てしまえば、雨や霧はそれほど苦にはならない。黄ばみかけた落葉松の林や、さらにもっと遠くの森を掠めて流れていく霧の奔放な動きを目にし、さらに歩き続けば、短い秋が一歩も二歩も近付いてくるような気がする。 
 本日はこの辺で。
 
 



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