入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’21年「秋」(13)

2021年09月14日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 機材の搬入午前9時。撮影終了、機材搬出完了午後11時。長い一日だった。その間には、草の乏しくなってきた第1牧区の牛に給塩したり、囲いの外で安気に日向ぼこしていた3頭の和牛には、置かれている立場を忘れさせないよう言い聞かせ、囲いの中に誘導して給餌をしたりした。
 また、カメラを手にした中高二人連れの女性の来訪者があったり、森林管理署の職員も昨日、西谷で40数台仕掛けたくくり罠の成果が6頭だったとわざわざ知らせるために立ち寄ってくれた。どちらにもコーヒーを振る舞い、久々の秋日和の中、忙しくも束の間の団欒を楽しんだ。

 毎年のことながら、下牧1ヶ月を切ると草の状態が気になってくる。牛たちも草を求めて普段は行かないような場所にも進出するようになる。さらには牧守にとって一番厄介な、脱柵ということも起こしかねない。
 牛たちは人間と違い、生きると食べる間に距離がない。食べることすなわち生きることであり、食べることがほぼ全てである。そこへ行けば人間は食べることと生きることの間に距離があり、いろいろなものを作り出し、生み出しても来た。文明であり、文化であり、食べることは快楽になり、文化にもなった。
 牛たちはここに連れてこられたら草だけであれだけの巨体を維持し、里に帰ってもひたすら食べ続けるだけの短い一生である。牛だけでなく、家畜はみんなそうだ。人間に怯えながらも森の中を自由にできる鹿、大洋を悠然と泳ぐクジラ、比較すべくもない。
 牛たちを見ていると、こんな山の中に住み着いてしまった人間であるが、人に生まれて来たこと、それも日本の、この時代であることをまさに僥倖だと思うしかない。

 落葉松は水の吸い上げを止め、葉に茶の色が染まりつつある。目前の小入笠の山腹にある1本の山桜の葉が色付き出した。狂った天気に痛めつけられていた間にも季節は進む。台風14号が去れば、本格的な秋を期待してもいいのだろうか。
 それにしても、昨日の撮影に関わる人たち、とりわけ若い女性が重い機材を運び、動かす姿を見ると、毎度のことながら感心する。きょうも東京で、朝からスタジオ撮影があると言っていた。頑張れ!
 本日はこの辺で。
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