台風14号の影響だろう、今一つスッキリとしない朝が来た。
一昨日、TDS君が牧に来て、牧柵の修理にまで力を貸してくれた。有難かった。別の牧区へ行って、古い支柱を引っこ抜き、有刺鉄線を回収し、それらを第2牧区で使いまわしにするとは知らず、そうした作業の大変さに驚いていた。
それはともかく、その際、きっと興味を持つだろうと、毎日新聞の9月14日付けの鹿に関する記事を持って来てくれた。「シカの分布域拡大止まらず」だ。
そのリードでは鹿の生息数が減少に転じたとか、「プロハンター」の制度にも触れたり、さらには鹿との「共存のヒントになりそうな研究成果まで出ている」というので急いで読み、しかし落胆した。
その記事の最後、屋久島の一部でヤクシカが50年捕獲されずに来たのに、個体数が減少しているという事実を取り上げ、自然界での調整機能に注目する。アメリカの国立公園ではこの機能を利用した管理「ナチュラルレギュレーション」により「個体数管理をしているケース」を紹介している。そして、いつものように有識者・北大教授もその可能性を認め、「期待を寄せている」と記事を締めくくっていた。
記者がどの程度野生鹿の生態について詳しいのかは分からないが、これだけの記事を書くにはそれだけの準備もしただろう。しかし、この記事にあるような、個体数を「自然のメカニズム」に任せて、さらには鹿と共存する、などということが近い将来にできるとは思えない。
ブラックバスが増え過ぎて一時期問題になり、しかしその後、限られた環境においてはそういう個体数調整が行われたということは聞いている。屋久島の一地方のヤクシカの例も、同じかも知れない。
森林生態学が専門の学者が、野生動物に興味を持つことは不思議でも何でもない。女性記者が、野生鹿との共存に関心を持つのも分からないことではない。きっと、野生鹿に対する優しい思いを込めて書かれた記事だろう。しかし、実態からはあまりにも遠い。
確かに「共存」、いい言葉だ。であるが、わが国の野生鹿対策おいては、こんな悠長なことなど言ってはいられない。きょうも大型の雄鹿2頭がダケカンバの林に通ずるいつもの草地で、30頭くらいの雌鹿を従えているところを見た。
本日はこの辺で。明日は沈黙します。