入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

    ’16年「夏」 (57)

2016年07月15日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 「今年の牛たちは素直で」と昨日のブログに書いたが、、いつもの年より除角してない牛が多いため、昨日第3牧区へ移動後に電気牧柵が大分被害を被った。この牧区は通常柵の内側に電気牧柵が張られているが、移ってきたばかりの牛にはその2本のアルミ線の正体など分からない。そこで、身体で知ることになるのだが、角のある牛は厄介である。
 6500ボルトの電圧の流れる電線に接触すると、さすがの巨体もたまらず「グウ」と情けない声を上げ、とっさに顔を引く。その際に、角を電線に引っ掛けてしまうのだ。今朝来たら、アルミ線が切断していたり、支柱が折れてしまった箇所が幾つもあった。
 それにしても妙なほど牛は、電気牧柵の下の草を食べたがる。そして「グウ」を自分で、あるいは仲間が何度か体験するうちに、触れてはいけないことを学習する。全頭が1回はこの試練に耐えるのか、はたまた牛たちの間で何らかの方法により知識を共有するのか、そこまでは分からない。が、ともかくしばらくすれば、1頭の例外もなく、その貧弱なアルミ線を怖がるようにはなる。
 第4牧区は放牧地をこの電気牧柵で二分しているが、この一部を開けて牛をどちらかに移動させる場合にかなり面倒な思いをする。牛がそのころにはすでに、電気牧柵の正体を知ってしまっているからだ。

 JALNEC八王子さま、年号は諡号としては使われるが、現在皇位にある天皇にそれを使ってはいけないとのご指摘、まったく仰せの通りで、うっかりとはいえ大変な誤りでした。北闕に向かいお詫びし、かつここでもお詫びして訂正いたします。

 山の歌には、その時その時の時代を背景にしたいい歌がたくさんある。あり過ぎる、くらいかも知れない。いつか誰もいない夜、露天風呂の中から幾千の星を見上げつつ歌えば、迷惑するのは鹿と狐とアナグマ・・・。
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    ’16年「夏」 (56)

2016年07月14日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など



   本日TDS君と恒例のテイ沢の草刈。最近はこの沢を通る人も増え、生い茂るクマササで道路が分からなくなるようなことはないが、それでも年中行事として大切にしている。
 写真の牛たちは血液検査の結果が陰性となり、全頭を第4牧区に移した。今年の牛たちは素直で、いつもに比べ簡単に済み一安堵。


   テイ沢を行くTDS君

 8月11日の「山の日」に因み、「山の日の歌」が発表された。そんなことより、天皇の退位の意向が最大のニュースとなった。・・・というように、いろいろあった今日。しかし、軽率なことをここに書くことは控えて、静かに山を下ろう。

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    ’16年「夏」 (55)

2016年07月13日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


第1牧区にいた牛44頭と、囲い罠の中にいたまき牛他6頭の放牧場所の入れ換えを、雨降る中で強行した。急坂を追われ、それまでとは環境が大きく変わった柵の中に押し込まれた牛たちは面喰ったようで、いつものように気の小さなホルスの中には大暴れをした牛もいた。
 先にパドックから草地に出されていたまき牛(種牛=雄の和牛)には笑った。目の前で次から次へと囲い罠に入っていく雌牛を目にして、あたかもハーレムに入ることを拒まれた王ででもあるかのように、焦り、怒り、かと見れば懇願し、奇妙な声まで出して気を引こうとしていた。しかし、後宮にはどうしても入れてもらえず、むなしく地団太を踏むばかりで可笑しくもあり、気の毒でもあった。
 今日は、牧区の入れ換えという目的の他に、感染症対策という重要な仕事があった。ワクチンを直接牛の背中に吹き付けるため、面倒ながら1頭づつ狭いパドックに入れ、同時にすでに感染しているかを調べるため、全頭から採血もした。
 牛の防疫対策については口蹄疫以外、一般には知られていないようだが、1杯の牛乳、或いは皿の上の1枚のステーキのために、実はかなり手のかかる仕事や対策が執られている。
 あんな大きな生き物が4カ月を過ごすために事前の準備があり、牛がいる間はもちろんだが、下りた後でも牧場の管理は初雪のころまで続く。さらにこのような広大な面積を必要とする牧場の放牧料収入は、しかし、スズメの涙どころか、ハエのおしっこ、だ。

 雨は止んだようだが霧は絶え間なく流れていく。たくさんの牛が夕暮れの草を食む様子を見ながら山を下ろう。それにしても何だか今日は、家までの距離がいつもより遠く感ずる。
 CHIYさんお久しぶりでござんす。星空を眺めながら、入浴する勇気が付いたらお出で下され。
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    ’16年「夏」 (54)

2016年07月12日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


  時代遅れをウリにしてきた入笠牧場キャンプ場も、時には時代の流れの飛沫くらいは浴びるわけで、先週末には天体望遠鏡が届き、今日は露天用の特注風呂桶一式が運び込まれた。特注風呂の贈り主は畏友のS君で、彼は以前からこの美しい星空の見える場所に露天風呂を設けるべきだと主張し、ついにそれを実現した、いやしてくれた。
 大人でも余裕で3人、いや4人でも可能だが、写真で分かるように、完全露天風呂のため風呂に入る以外に身を隠すことができない。公序良俗に反することはもちろんできないが、この野趣溢れる雰囲気も無視することはできない。さあどうするか。一案として入浴は夜間のみとして、わずかな星の光だけを頼りに入浴する、ということにしたらどうだろうか。



 まだどのように営業するかは未定だが、数多き友人たちの意見を参考にして決めたい。ただ、賢しら口をきくようだが、天体望遠鏡もこの風呂も、あまり営業に利用しようとは思っていない。だから、いつでも利用できる、というわけにはいかないと思う。
 ここの第一のウリは静寂、8月の盆のころはさすがに長年通ってくれる懐かしい顔が多数やってくるが、他の季節は深い山気と、星空の美しさに魅了されたいと思う人たちが主になる。今後もそういう人らに気に入られ、喜ばれ、愛されたいと願っている。



 今、湯の加減を見に行ったら、煙突から煙が上がっていた。ありがとう、S君。雲さえなければ、この煙突の上に「夏の大三角形」が現れるはず。早く来て、湯船の中から得意の歌を聞かせてくれろ。

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    ’16年「夏」 (53)

2016年07月11日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


いい天気で牛も喜んでいる。様子を見に上に行くと、目敏く和牛がこっちを見付けて、塩をよこせと走ってきた。しかし全頭の牛を確認し、異常がないかを確かめてからでなければ塩は与えないことにしている。牛の中には寝様の悪いのもいて、近付いて行っても、半目を開けたまま寝長まっていたりして、こちらの弱った臓器の一部に軽い衝撃が走る。
 前にも書いたが、短い牛の生涯の中でここで自由気ままに過ごせる4か月が、最も幸福な時であるはずだ。少なくともそういう気持ちで、牛たちには接しているが、さてそれが牛たちに伝わっているかは覚束ない。
 それにしても酪農は、手がかかり、気を遣い、労多い仕事である。益も少ないかどうかまでは分からないが、将来にも不安は付きまとう。高齢化が進む中、今のような状態で、若い労働力が育っていくか心配である。
 
 酪農も含め、日本の農業が抱える問題は深刻で、米さえ作っていっれば良かった時代はとうに過ぎ去った。にもかかわらず、兼業農家の多くは補助金や機械化に頼り、集約化が進もうとあまり危機感を持っているようには見えない。日本の農業人口は4パーセント、GDPに占める割合はたったの1パーセント、農業従事者の平均年齢がやがて70歳になるという。だからといって、食をおろそかにしてはいけないと、あの人はそれだけを言いつつこの世を退場していった。
 こうやって毎日牧場に来て、牛の様子を見たり、牧場施設の維持をする牧場管理人という仕事も、考えるまでもなく農業従事者である。百姓である。あまり大したことはないが、そういう自覚を、10年の歳月が持たせてくれた。

 本日も農業従事者は、天体観測を諦めて、家路をたどることにいたします。
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