入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’19年「初夏」 (24)

2019年06月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 
 
 きょうは梅雨の晴れ間、文句なしの素晴らしい好天。空はどこまでも青く、深い。1羽のトンビがゆっくりとその空を横切っていく。上昇気流に乗っているのか、羽は動いていない。
 上ってくる途中の山室川の谷には木漏れ日が射し込み、そういう場所では緑の薄暗さを払うように清冽な川面がキラキラと輝いていた。いつものように人影を見掛けたが、釣り師なら一度は竿を振るいたくなるような渓相だけに、期待を裏切らないだけの釣果があるといいのだが。

 そんな安気なことを呟いてから、キャンプ場の草刈りを少しやり、10時を過ぎたので中断して、反芻の時間になっているはずの第1牧区の牛たちに塩を持っていった。このごろはすっかり調教が進み、塩場の近くに車を停めてクラクションを鳴らせば、それで意味が分かるようで三々五々集まってくるようになった。その時に、日課の頭数確認も行う。
 ところがきょうは、何度数えても1頭が足りない。実は嫌な予感がしていた。第1牧区のゲートを開けるため車を停めた時、前輪が牛の落とし物を踏んでしまったのだ。あまり古い物でもなさそうで、どうしてそんなものがそこに落ちているのだろうと訝しく思ったが、今まで気付かずにいたということもある。すでに2回、牛は脱柵しているから、そのときの落とし物の可能性も捨てられないとその時は思った。そう思いたかった。
 しかし、1頭確認できないとなると、事故か、脱柵しかない。先程の落とし物は、その時の物だったのか。ただ、脱柵した場合、6番のように種牛に誘引されるか、あるいは33番のように牧柵の近くで柵内に戻れず、当惑している姿を見付けることが多いのだが、きょうの場合はどちらでもない。そうなると、事故の可能性が高い。事故とは、牛の死を意味する。
 取り敢えず牧区内を一巡し、それから管理棟に戻り、未確認牛が2番であると分かった。同時に、昼休みだったが、下にもその旨を連絡し、再び上に上がっていった。事故の可能性も高かったが、もし脱柵であればその場所を見付け、補修しておかなければならない。捜索はそれから、昼飯はもちろんお預けである。(明日この続きをもう少し)

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     ’19年「初夏」 (23)

2019年06月24日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 またイノシシ奴に、ジグソーパズルの大量出題をされた。まだ貴婦人の丘を象徴するダケカンバの周囲は無事だが、これ以上勝手なことをするなら、手持ちのくくり罠を何台か投入するしかない。仮に支点が抜けて逃亡されても、あの場所はイノシシにとって危険な所だと教えることができれば、それだけでも効果はある。
 牧草に与える肥料は機械を使わず手で撒き、散乱していた石ころは根気を出してこれも手で拾った。そうやってあの緑の丘が貴婦人になぞらえられるまでになって、幾つものコマーシャルや映画の舞台になった。
 そういう場所であるのにかつては、よく侵入する者がいた。オートバイを乗り入れた不埒者もいた。多勢に無勢をいいことに中には開き直ったり、食ってかかってきた者たちもいたりして何度となく後味の悪い思いをした。
 そして今度はイノシシである・・・。
 今思い出したが、草地のすぐ隣の林の中でくくり罠にイノシシが掛かったことがあった。あの丘は鹿の集団がよく出没するため、罠を仕掛けてこれまでにかなりの数を捕獲した。偶々その罠の一つにイノシシが掛かったというわけで、折よく囲い罠の鹿の殺処分に来てくれていたK氏に銃で仕留めてもらい、その後獲物は小屋に来ていた人たちの胃袋に収まったという記憶がある。
 これまでもイノシシの被害がなかったわけではない。それどころか毎年のようにあった。ただ、あまり使わない放牧地であったりしたからそれほど問題にはしてこなかっただけで、それも被害が出るのは大体7月の初旬だった。
 対策として撒いた石油や石灰の臭いの効果はあったと思いたいが、昨夜の雨で臭いも消えてしまっただろう。罠の設置もだが、草を傷めない人工的な臭気の強い何かを見付けなければなるまい。え、またカプサイシン?ムー。

 昨日立ち寄った人から、西穂と奥穂の間にあるジャンダルムに今は鎖が設置されていると聞いた。誰かあそこも、一般の登山路にしたいという思惑でもあるのだろうか。

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     ’19年「初夏」 (22)

2019年06月23日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 里には蕎麦の花が咲くようになった。緑ばかりの風景の中にその清涼な白さを見て、一服入れた時のような安堵感を覚えた。

 昨日は午後の半日をかけて、貴婦人の丘のイノシシに掘り起こされた草地の埋め戻しをやった。せめてあの緑の丘の斜面だけでも何とかならないかと、ある人に言われたからだ。まだ終わっていないが、道路に沿った部分は被害がひどく、諦めた。石油と石灰を持っていき、牧草に影響のない場所を選んで少し散布しておいた。今朝見た限りでは、被害の拡大は止まったみたいだが、まだまだ安心はできない。
「彼ら(イノシシ)の行動は夜間となるから、これには鉄砲撃ちに頼ることができない」と呟いたら、何故だと問われたが、特殊な場合を省いてわが国では、日没から夜明けまでは銃の使用がご法度になっているからだ。違反したらエライことになるが、そういう話はまず聞かない。
 それでいいと思う。アメリカなどはヘリコプターにサーチライトを積み、光の中に見えた鹿を銃撃するなどという物騒なやり方もあるらしいが、狭い日本にこれだけの人が住んでいてはそんなことは無理だ。それに地形的な問題もある。あの国のようなどこまでも続く平原などない。あっても、霧ヶ峰や美ヶ原へ行けば分かるが、観光道路が走って自然は無様なまでに歪められている。
 きょうもこれから埋め戻しに貴婦人の丘へ行くが、なぜこんなことをしてなければならないのだろうと、つい思う。ジグソーパズルを解くような面白さもないわけっではないが、不毛に近い作業ではある。雨が降らなければ早晩草は刈れるからだ。
 休日の行楽に浮かれる人たちを横目に、脱柵牛や種牛に悩まされ、かと思えば今度はイノシシときて、それでもこれだけの広大な牧場を管理さ・せ・て・貰って・い・るのだと、言い聞かせるしかない。今も災害に立ち向かっている人が大勢いる。自制、我慢、それにしてもしんどいワ。

 昨日、夕方第1牧区へ行ったら、三角点の丘の近くに7頭の牛がいた。残り13頭を「舞台」で確認して再び戻ってきたら、塩くれ場にさっきの7頭のうち3頭が、塩を持ってきてくれたのかと集まっていた。調教の効果が出てきた。給塩はきょう。

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     ’19年「初夏」 (21)

2019年06月22日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 間もなく午前4時半。HALも目を覚ましたようだ。風呂に入り、その後朝飯を食べたら、曇天の中を上に行く。いつもこれほど早く起きているわけではないが昨夜は夜中に2度も目が覚め、それでも合算すればそれなりの時間を眠ったことになると、先ほど起き出したところだ。



 それにしても後から後からいろいろなことが起きる。2枚目の写真、イノシシのしわざ。ここは入笠山の登山口から少し来た東門テキサスゲートそば、第4牧区のB放牧地。貴婦人の丘の斜面もすでにかなりやられ、大沢山の第3牧区にまでもイノシシの被害が及んでいる。ここまで広範にやられたということは初めてで、かなりの数が牧場に集中攻撃しているとしか考えられない。残念ながら鹿と同じように有効な対処の方法はなく、その被害は牧草を掘り起こされてしまうのだから鹿と比べてもより甚大だ。
 まあ、罠という手がないわけではないが、イノシシの場合は鹿と違ってひとしきら大暴れすると、別の場所へ移動するようなのだ。今頃になって、それも罠の支点を得ることが難しい草地では相手がイノシシとなると、今ひとつその気になれない。この頃は免許がなくても私有地での罠掛けは大目に見てくれるらしいが、仮に捕獲したとしても、その後のことがこれまた厄介なことになる。障害物のない草地を命懸けで逃げ回る凶暴な野生動物を、ナイフで止め刺しするとなると一大事になるだろう。まだそんな経験はない。
 彼らの行動は夜間となるから、これには鉄砲撃ちに頼ることもできない。あまり効果は期待できないが、嗅覚が優れているから、軽トラの排気ガスでも残し相手をいくらか警戒させるくらいで、癪に障るがやられっ放し。

 上には8時少し前に着いた。牧場(牧場)の朝はいつも新鮮で、すがすがしくていい。カッコーの声を聞きながら、目の前の囲いの中の牛たちを見ているだけで何とも長閑な気分になる。老哲学者は今朝も孤独を守り、何かを思い出そうとするかのように固まっている。

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     ’19年「初夏」 (20)

2019年06月21日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 朝のうちはカッコーの声もしていたが、今はセミの鳴き声しかしない。薄日が射して気温は20度まで上がり、気だるい夏の午後といった感じだ。
 
 マッキー以外は、囲いの中も第1牧区も、牛たちは落ち着いている。第1牧区の牛たちにとってはきょうは給塩の日で、あえて量を少なめにして与えておいた。多すぎると残し、それを鹿がおこぼれ頂戴とばかりにやって来る。また、頻度は変えないがもうしばらくは、いつでも塩を欲しがるくらいの状態にしておこうと考えている。その方が調教しやすいからだ。7月ごろには呼べばかなり遠方にいても来るようになるだろう。
 初代マッキーがいたころは、クラクションを鳴らすと、姿は見えないままバキバキと森の中の枯れ枝でも踏み折る音まで立てながら、10分くらいの時間をかけてもやってきたものだ。雄牛には注意しろと言われていたが、初代に不安を感じたことは一度もなかった。一度脱柵して、嬉しそうに5,6頭の牛を引き連れ、弁天様の傍の三叉路まで小走りで現れた時には焦ったが、それでも大事なく済んだ。
 そこへいくと、二代目さんには参る。クマスプレーの案に対しては興奮させない方がいいという理由で、下では賛成ではないようだ。しかし、いつ、どういう状態になれば、安心して種牛に接するようになれるか、それを誰なら分かるというのだろう。一昨年、コンサルタントのY氏が冷や汗を流した時は、入牧して1ヶ月以上経っていたワクチン噴霧の際だったし、給塩に行って妙な仕草をしながら威嚇してきたたのは、中間検査の後のことだった。今の状態で囲いから第4牧区へ出してしまえば、一体どういうことが起きるか予測がつかない。

 先程、下から連絡があって、当面の対策をどうするかが決まった。やはり、できるだけ刺激を与えない、ということが今後の方針となった。そして最悪、第4牧区には出せなくとも、囲いの中で給餌することになってでも、安全の上から止むを得ないということになった。給餌してでも囲い内に置く、ということなら、異議はない。畜産課や、マッキーの畜主も来週には上がってくるという。

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