第1牧区の塩場から、軽トラの警笛を鳴らして合図を送る。やがて牛は反応したのか、「御所平」の方から鳴き声がした。しばらく待つも深い霧の中に姿を現す様子がない。そのままそこに塩と2種の配合飼料をおいてくれば、目敏い鹿の餌になってしまう。声の主の方へこちらから向かうことにした。
思った通り全頭の和牛が「御所平」の放牧地にいた。声を上げると、一斉にこっちへ向かってきたのを幸い、さらに誘導して塩場まで連れていく。距離にして4乃至500㍍くらいか。まだ10日も経っていないが、和牛はホルスタインと比べればこんなふうに調教がしやすい。
話は変わるが、富士山へは10回以上登っている。いずれの時も山小屋が営業していない春、初夏、秋、冬で、単独の時もあれば、案内を請われて登ったこともある。
「日本一の山」だから、連れていけと言われれば大体は断ることをしなかった。身重の亡妻をつれていったこともあれば、一人娘の名前も富士山に因んだ名前を付けた。
霊峰は相変わらず人気が高いようで、悪天の日でさえ日本人ばかりか外人も多くの人が訪れているらしい。5合目の売店や6合目まで行って帰る人も多いようだが、そういう人たちはとにかく富士山に来たということで満足するのだろう。
そんな山に、登山鉄道構想が持ち上がっているという。驚いた。何でも車やバスで訪れる人があまりに多く、環境にも悪影響を及ぼしているのだとか。登山列車にすれば、人数制限にも繋がるし、そうなれば上高地や黒部ダム、室堂のように通行規制をすることも可能になる。ただし、鉄道構想は5合目までで、それもスバルラインを利用する考えのようだ。
山梨県知事は前向きのようだが、麓の富士吉田市々長は反対している。理由は、霊峰富士は信仰の山、世界遺産にも登録されていて、登山鉄道は相応しくないのだと。多分、これは表向きの理由で、反対する本当の理由は別にあるだろう。
と、そういう詮索は止めておくが、以前にも呟いたようにあの山小屋、それと便所、今は知らないが、霊峰富士が泣きはしないかと思ったものだ。
便所の方は大分改善されたと聞くが、八合五尺辺りに横穴を開け、立派な公営の水洗トイレを設け、しっかりと使用料を取ればいいと、当時は行く度に思った。現在の料金はは200円、300円らしいが、それではとても間に合うまい。
小屋の方は宿泊経験がないけれど、果たしてこの件も、今は古い登山者の話になってくれてるといいのだが。
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本日はこの辺で。