福島第1原発:高校進路指導進まず 「募集方針示して」
臨時職員室で進路指導方針を話し合う教諭=福島県南相馬市鹿島区の市立鹿島中学校で2011年6月6日、神保圭作撮影 東京電力福島第1原発事故の影響で、福島県内の一部中学校で進路指導が難航している。第1原発の半径30キロ圏内には県立高校8校があるが、他校を間借りしての授業が続いており、来年度も例年通りに新入生を募集するか決められないためだ。中学教諭や保護者の間に「早く方針が決まらないと、子供たちの将来にしわ寄せが及びかねない」との懸念が広がっている。【神保圭作】
南相馬市鹿島区の市立鹿島中。立ち入りが規制される「警戒区域」と、授業が行えない「緊急時避難準備区域」の市立中4校が間借りし、特別教室や武道場で授業を実施している。
新年度が始まったのは4月22日。例年6月には3年生に実力テストと進路希望調査を実施して進路を固めるが、授業の遅れもあって実力テストは延期。個々の生徒の学力や受験可能な学校を把握できないまま、とりあえず希望調査を始めた。
今月3日。同校に間借りする4校の一つ、市立原町三中の千葉正俊教諭(34)は生徒に希望調査表を配り、原発近くの高校が来年度は生徒を募集しない可能性があることを伝えた。同中からは地元の公立高に進む生徒が多いが、千葉教諭は「事故が収束しなければ、来春は募集人数がゼロか減らす学校もあるのではないか」と心配する。
同中3年の村井龍真(りょうま)さん(15)は幼い頃から自動車整備士になるのが夢で、自宅近くの県立小高工業高への進学を志してきた。ところが、同校は原発事故で警戒区域内になり、現在は5カ所の県立高校に生徒が分散している。
千葉教諭の説明を聞いた村井さんは「他の高校に進むなんて考えたことがないのに……」と言葉を詰まらせた。千葉教諭は「生徒の夢をつぶさないよう別の選択肢を示したいが、情報がほとんどなく、どうしようもない」と悔しがる。
保護者も焦りを募らせている。同市原町区の主婦(50)は放射線の健康への影響が心配で、中学3年の次女(15)を福島市内の親類宅に避難させ、学校も転校させた。しかし、次女が希望しているのは、地元の県立高。「難しい思春期を迎えたこともあり、希望する高校を受験できるならば、娘を自宅に戻したい。でも学校に問い合わせても『分からない』と言われるだけで、判断がつかない」
県教委学校経営支援課の担当者は「生徒や保護者の不安は承知しており、できるだけ早く方針を示せるよう努力したい。とはいえ、原発事故の収束のめどが立たない中では……」と頭を抱える。