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東京電力事故 裁判の争点と双方の主張は

2022年07月14日 14時03分28秒 | 原子力

裁判の争点と双方の主張は 

裁判では原発事故当時、東京電力の経営を担っていた勝俣恒久 元会長、清水正孝 元社長、武藤栄 元副社長、武黒一郎 元副社長、小森明生 元常務の5人の対応に過失があったかどうかが争われています。

最大の争点は、巨大津波が原発を襲う可能性を旧経営陣が事前に予測できたかどうかです。

その前提として焦点となるのが、地震や津波などの専門家でつくる国の地震調査研究推進本部が震災の9年前、2002年に公表した「長期評価」の信頼性です。

この「長期評価」では福島県沖を含む太平洋側の広い範囲でマグニチュード8クラスの津波を伴う大地震が30年以内に20%程度の確率で発生するという新たな見解が示されていました。

これについて株主側は「国の公的機関が防災目的で示した見解で、原発の安全確保に取り入れるだけの十分な信頼性があった」と主張しました。

そのうえで「長期評価」の見解をもとに5人は事故が起きる危険性をそれぞれ予測できたはずなのに対策を講じる義務を怠ったと主張しました。

具体的には、武黒元副社長と武藤元副社長については、地震や津波を担当するグループの幹部などから「長期評価」をもとにした津波の試算結果を伝えられた2008年6月から8月にかけて、小森元常務は取締役に就任した2010年6月には、事故を予測することができたとしています。

また、勝俣元会長と清水元社長は2009年2月に開かれた会長以下の幹部が出席する「御前会議」と呼ばれる打ち合わせで「長期評価」に関する見解が伝えられ、危険性を認識していたはずだとしています。

一方、旧経営陣側はまず「長期評価」について「国の機関や専門家など多方面から疑問も示されていて津波対策に取り入れるべき信頼性があったとは言えない」と反論しました。

さらに、勝俣元会長と清水元社長は「『長期評価』の報告は受けていない」としたうえで、「対策が必要になれば高度な技術と専門性を持つ原子力担当の部署から提案があると考えていた」などとして、対応に問題はなかったと主張しています。

また勝俣元会長は、そもそも東京電力の会長には業務執行に関する権限がないとして、安全対策を指示する義務はなかったとも主張しました。

原子力部門の責任者だった武黒元副社長と武藤元副社長、小森元常務は、「当時接していた情報だけでは巨大な津波が押し寄せることを予測することは不可能だった」としたうえで、「土木学会の専門家に検証を依頼するなどの対応を取っていた」として判断は適切だったと主張しました。

対策を取らせていれば事故を防げたかどうかも重要な争点となりました。

株主側は「防潮堤の建設や施設に水が入らないようにする『水密化』などの対策をすることは可能で、行っていれば事故は防げた」と主張しました。

一方、旧経営陣側は「『長期評価』に基づいて対策をしたとしても、実際の津波の規模は想定とは全く異なり、事故を防ぐことはできなかった。事故の危険性を認識してすぐに対策を決めたとしても工事などに時間がかかり間に合わなかった」などとして経営上の責任はないと主張しています。
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