哀しいできごと
首相肝いり政策、不正横行 全体像見えず、進まぬ検証 新型コロナ無料検査詐欺
▽多少?
「不正の横行は業界内では知られた話だった」。事業者側と取引があった会社の幹部はこう明かす。うその申請に使う名簿が出回っているとのうわさもあったという。
事業は2021年12月、岸田氏の首相就任から3カ月足らずで始まった。感染拡大防止と社会活動の両立が目的。イベント参加や帰省の際に陰性を確認したい人たちが各地でPCR検査などを受け、件数などに応じて都道府県から事業者に補助金が支払われた。
内閣官房の担当者は「多少の不正は起き得ると考えたが制度策定を急いだ」と振り返る。財源の臨時交付金は予算規模で6千億円超。ピーク時は全国で1万カ所以上の検査場が開設され、新型コロナが5類に移行した23年5月までに終了した。
▽水増し9倍
東京都が本格的な調査を始めたのは22年6月ごろ。感染者が減った時期に検査数が不自然に多い事業者が複数あったためだ。立ち入り調査などを実施し、少なくとも11事業者で不正を確認。実際の約9倍の件数を報告していたケースもあった。
目立ったのは抗原検査数の水増しだ。検体は検査場で破棄されるため「外部に提出が必要なPCR検査より露見しにくいためだろう」(都担当者)。不正申請のうち実際に交付されたのは比較的早期に申請された約16億7千万円。受検者とされる人に電話するなど不正の確認に励んだという都は「一定のチェック機能は果たした」とする。
▽無責任
不正について東京以外も大阪や千葉などが個別に発表する一方、国は全国の状況を取りまとめていない。全国の累計検査数や事業者に交付した補助金の総額も現段階で明らかにしておらず、22年度実施分の実績や効果の分析は、24年度に公表するとしている。
東大の金井利之(かない・としゆき)教授(自治体行政学)は「急ピッチで作った制度ならば事後的検証を強化するしかないが、国の情報開示や検証は不十分だ。判明した不正が氷山の一角なのかどうかも分からない」と指摘。現状では不正対策や感染拡大防止の効果を評価しようがないとして「対策したポーズに過ぎず無責任だ」と批判した。
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