花粉症、低侵襲手術も検討を
鼻腔整形術は、いびきや睡眠時無呼吸と鼻炎症状の両者を改善
2011年12月2日 久松建一(久松耳鼻咽喉科医院) カテゴリ:一般内科疾患・アレルギー疾患・耳鼻咽喉科疾患
2011年11月10日に行われた第61回日本アレルギー学会秋季学術大会で、「2011年のスギ・ヒノキ花粉症に対する手術療法の検討」と題して発表した内容の一部を報告する。
花粉症、すなわちアレルギー性鼻炎に対する手術療法として、下鼻甲介粘膜コブレーション手術と、新しい手術である鼻腔整形術の有用性について検討した。いずれも低侵襲や睡眠時呼吸障害の改善などの特徴があり、従来の薬物療法などに加えるオプション療法として有用である。
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アレルギー性鼻炎の手術療法
アレルギー性鼻炎に対する手術療法は、わが国で50年以上も前より行われてきた。鼻中隔矯正術、下鼻甲介切除術、下鼻甲介粘膜の広範囲切除術、鼻内整形術(鼻中隔側の下鼻甲介粘膜膜と骨膜の切除、鼻中隔矯正術、中鼻甲介の整形、篩骨洞開放、上顎洞開窓術)、鼻腔の副交感神経に対するヴィデイアン神経切除術などがある。近年では、下鼻甲介粘膜に対してレーザー手術が広く行われるようになった。一方、手術機器の進歩に伴い、最近は鼻粘膜を犠牲にしない低侵襲性の術式が開発されている。
我々は花粉症に対する下鼻甲介粘膜コブレーション手術と鼻腔整形術の有用性について検討した。コブレーション手術は、低温にコントロールされたラジオ波を用い、軟部組織を凝固吸収させることで減量が可能である。具体的には、局所麻酔下に双極電極を粘膜深部に刺入して約10秒間通電し、凝固させる方法で、所要時間は麻酔を含め約15分である。鼻腔構造に異常があっても、粘膜に適用すれば鼻アレルギー症状には効果的である。今回、症例数を増やして検討したので報告する。
さらに、鼻腔の異常構造の矯正と、下鼻甲介骨を副交感神経繊維とともに切除する鼻腔整形術についても触れる。
コブレーション手術は低侵襲で有用
2011年1月から4月までにコブレーション手術を行った34人(男性17人、女性17人)の花粉症患者を対象に、術前、術後の鼻症状、QOL、手術に対するアンケート調査を行い検討した。コブレーション手術は、下鼻甲介粘膜の数カ所に双極低温高周波電極を刺入し、電圧セットポイントは5から6に設定、10秒間通電した。
結果、術後数日以内に鼻症状が改善され、QOLも改善された。術後の有害事象は観察されなかった。術後の疼痛、出血は軽度で、手術に対する満足度は高かった。下鼻甲介粘膜コブレーション手術は、鼻アレルギーに対して、鼻粘膜上皮を犠牲にしない低侵襲性外来手術として、従来の薬物療法、免疫療法、手術療法のオプション療法として極めて有用と思われた。
鼻腔整形術もぜひオプションに
鼻腔抵抗は仰臥位で増大する。また、睡眠中は副交感神経優位の状態で鼻腔抵抗は一層増加、つまり鼻腔通気度が悪くなることが予想され、いびきや睡眠時呼吸障害の原因となっている。鼻腔整形術は、これらの治療のために筆者が考案した新しい手術法である(日本鼻科学会会誌.48(4),349-354,2009)。従来法との大きな相違は、下鼻甲介骨と鼻の副交感神経である大錐体神経、ヴィデイアン神経末梢の後鼻神経を鼻内で切除する点にある。鼻粘膜を保存するので、微粘膜上皮の粘液繊毛輸送機能を保持でき、睡眠中に生じる咽頭陰圧を軽減する効果がある。睡眠時呼吸障害患者の約92%がアレルギー性鼻炎を合併しており、この手術は理に適った方法と言える。
今回の検討では鼻腔整形術も施行した。当然ながら、鼻腔整形術の方が下鼻甲介粘膜コブレーション手術の成績を上回った。なお、興味深いことに、鼻腔整形術もコブレーション手術も、眼症状に対して無効とする症例より有効と回答する症例の方が多かった。
2年以上は効果が持続
手術療法は低侵襲で効果的な方法が望まれる。コブレーション手術とレーザー手術の比較論文が多く発表されているが、いずれも疼痛がほとんどなく、粘膜上皮機能を保存できるコブレーション手術がより優れていると結論されている。コブレーション手術の施行時期は、花粉飛散前、中に関係なく有効であった。なお、鼻中隔彎曲、下鼻甲介の突出などがある場合は、観血的に解決すべきと考える。
コブレーション手術の効果持続期間は2年以上と思われるが、検討が十分ではなく、今後の蓄積が待たれる。従来の鼻科手術では鼻中隔矯正術、下鼻甲介切除術の併用が最も広く行われてきた。しかし、鼻粘膜は再生し、アレルギー炎症によって肥厚するので、薬物療法や特異的減感作療法などの併用が望まれる。
鼻腔整形術によるアレルギー性鼻炎への効果は、少なくとも3年以上持続することが観察されている。