前立腺癌とビスホスホネート
前立腺癌骨転移にビスホスホネート投与が有効です。
前立腺癌は、男性ホルモン依存性に増殖するため、男性ホルモンを減らすホルモン療法をしばしば行います。ホルモン療法を長期に行う際に問題となる主な副作用には、貧血、骨粗しょう症、発汗、顔のほてり、うつ傾向、無気力感などがあります。この中で最も問題なのが、骨粗しょう症です。骨粗しょう症になると骨折しやすくなります。骨粗しょう症の予防には、経口のビスホスホネートという薬が有効です。ホルモン療法を行う際には保険で認可されている経口剤を併用することによってかなりの骨粗しょう症を予防できます。
また、進行性前立腺癌は骨によく転移します。骨転移による骨痛は非常につらいため、鎮痛薬を使うことが多くなります。骨痛がひどい場合にはしばしば麻薬も使用します。骨転移による骨痛に対しても点滴で行うビスホスホネート(ゾレドロン酸)はしばしば有効です。ビスホスホネートを使うことにより、骨痛を軽減し、鎮痛剤、麻薬の量を減量することも可能です。
最近西欧の臨床研究で、骨転移を有するホルモン抵抗性となった前立腺癌でも、静脈注射剤のビスホスホネートを使用して骨病変の悪化を遅らせることができたとの報告がなされました。私たちが行った動物実験でも、ビスホスホネートで前立腺癌による骨転移を予防することができるという結果が得られました。この結果をもとに多施設で臨床試験を行ったところ、ゾレドロン酸をホルモン療法開始時から使用すると、再燃するまでの期間を延長することができるという結果を得ることができました。
ただし、長期間ゾレドロン酸を使用すると、口腔内の衛生状態の悪い患者さんなどで顎骨壊死という副作用が発生する可能性もあり、注意が必要です。