僕は,『愛と誠』は1990年代後半にネットカフェで通読した記憶が鮮明にある。
なんでそんなに鮮明かというと,当時流行しだしたネットカフェだった。
近所に5件はあった。
いまみたいな「ネカフェ難民」という時代とは違って,本当に「通信費をなんとか節約」して楽しむ人が多かったように思う。
まだ回線がISDNで,メールなんて週に1回するかどうかの時代。
とにかく通信費が高くて家に回線つなげないので,週一で通っていた。
そこのネットカフェに『愛と誠』が全巻あったのだ。
噂に聞いたとおり,梶原一騎のパワーが炸裂
「君のためなら死ねる」;岩清水君のセリフも,画力に繊細さが共存するながやす巧の劇画も圧倒的だ。
連載当時の僕は幼稚園児だったので当然詳細不明だったが,その盛り上がりは尋常ではなかったことが判明。
マスコミでの宣伝,実写映画化,TVドラマ化(最近ネット動画で見たが,これまた超絶的に怖い...),あらゆるメディアMIXがされたといえよう。
しかし,梶原一騎はこの原作をいろいろな意味で転機にして,堕落の人生になったというのが通説。
でも,梶原一騎の「死んだあとに楽にさせてやる」というお嫁さんへの愛情ある言葉は,原画の評価が40年以上経過してもあることで,確実に実証された。
絵が評価されたのであって原作者の評価でないというのは,梶原一騎原作にはあてはまらない。
当時の梶原一騎は「神」だったのだから。ながやす巧が選ばれたのも,梶原一騎の力という説がよく聞かれる。
自分が梶原一騎のイベントに行ったのは2017年の8月だったか。
僕はほとんど自分の好きな作品を集めてあるが,やっぱり梶原一騎は別格。
ながやす巧の劇画も超絶で,早乙女愛(主人公・太賀誠の運命の人)の美しさは,いま見てもすごいと思う。
本当に優れた芸術は死後にこそ評価される。
その言葉をあらためて噛みしめた。
それにしても,原画管理はどうなっていたのかと,むしろ講談社の管理体制が問題だと思った次第である。