Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

侍列車-十三日付紙面

2006-06-16 | ワールドカップ06・10・14
「侍列車」と題したFAZ紙の記事を紹介する。フランクフルトからマンハイムへの列車の旅が、簡素で美しい文章に、なかなか雰囲気豊かに描かれている。

フランクフルトからパリへのユーロシティーのコンパートメントを、若いフォトジェニー風に美しい日本女性二人は、他三人の日本人と占めていた。一人は明るい下地を、一人は暗い下地の青の着物を着ていた。蓮の花の縫いこまれ青白の飾り帯は、彼女らの衣装に不思議なエレガンスを与えていた。二人とも茶のきれいに高く結った髪に銀の結い止めをしていて、それは蓮の花のパターンのアクセサリーに飾られていた。

可憐な手提げ袋には小さな扇子が挟まれている。この若い女性たちがパリサロンに輝きを与えたとしても、少しも不思議ではない。しかし彼女たちは、同行のだらしないブルーのTシャツや明るいショーツに身を包む男たちとなにも変わらず、フランスへ行くつもりなどは毛頭無いのである。

ガイドブック「決定版ワールドカップジャーマニー2006年」のカイザースラウテルンの項を一生懸命勉強していた。日本サッカー小僧の心をときめかして、草木もカイザースラウテルンへと靡いたのであった。午後の早い時間に対オーストラリア戦があったのだ。ユーロシティーはこうして、殆ど日本人たちの手に落ちて、立錐の余地無く詰め込まれた。-どこもかしこもブルーである。

しかしそれだからといってアルコールに酔うわけでもタバコの煙に包まれるわけでもない。ここを占領するのは日本ナショナルチームのトリコロールのブルーなのである。「どうして、ブルーなの?」と、二人の内の一人の女性に訊いてみた。彼女は分からなくて、その質問を通訳して更に渡した。すると中の一人の男性が理由を知っていた。

二十年以上前に 島 のサッカー関係者は、日の丸の赤ではなしに、水と海の色である青に決定したんですよ。そしてこの勇気を示す青色を、侍ブルーとすると誇りに満ちて呼んだ。列車は完璧にそして最高に洗練されたアナーキーに包まれていた。熱に浮かされる事も騒ぎも全く無く。

一等席と二等席の秩序の差異は、日本人の礼儀によってフランクフルトで乗車するや否や直ぐに保たれた。マンハイムで列車は停車すると多くのビジネスマンが乗り込んで来た。その彼らが自分の予約した席を日本のゲストたちのために先ずは譲って措いた各々の心に、ワールドカップの始まりの日々の素晴らしい独特の雰囲気があった。小言も言わずに彼らは、通路に気丈に立っていた。

言わずもがな、検札はカイザースラウテルンまでは無かった。女車掌さんが通り抜けるのは全く不可能だったに違いない。ただスピーカーを通じて、私たちに良い旅をと呼びかけていた。

記事署名 hie.


注:最近でも欧州横断の列車にはコンパートメント車両があるらしい。それらの席は、予約される都度、其々紙で区間などが記されているが、旅行者には判らないことが多い。フランクフルトからパリへの路線はマンハイム経由となる。マンハイムからパリ方向へ一駅でカイザースラウテルンへと到着する。


今日の一言:
ポーランドはそれにしても貧弱でどうしようもない。お馴染みの助っ人パートタイマー・オリヴェル・ヌヴェルの一点。ドイツチームの有利になるように室内は摂氏22度の快適温度に調整されていた。33度以上の炎天下の他の試合とは大違いである。主催国は勝ち抜いて当然なのだろう。

6月12日にヴィーンで死去した作曲家ジョルジュ・リゲッティについての記事は改めて書きたい。
コメント (6)
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