Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

正当化の必要がある金満

2007-07-22 | マスメディア批評
パウル・ザッハーと聞いて、何処かで聞いたことがあると思う人は、二十世紀前半の音楽に馴染んでいる人であろう。

バーゼルやチューリッヒで室内楽団を創立して、自ら指揮を取っていた。何よりもその名前は、二十世紀における音楽の大パトロンとして名を残す。氏によって委嘱を受け献呈された曲は200曲以上に及ぶが、その中には大作曲家の有名曲も並ぶ。

もっとも有名曲は、リヒャルト・シュトラウスの「メタモルフォーゼン」であろうか?この曲は弦楽曲に関わらず大交響楽団の大指揮者が取り上げていることで知られている。さらに、重要な曲として、バルトークの「弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽」が挙がるだろう。にストラヴィンスキーの「弦楽のための協奏曲 ニ長調」やマルティヌーや交響曲4番のオネゲルなどの作曲家の名前が連なる。

このパウル・ザッハーの人生最高の勝利は、バーゼルのロッシュ社の創立者の息子嫁が未亡人となった暁に知り合って、膨大な財産を運用出来るようになったことに違いない。もともと、父親は運送業の会社員で母親は繕いものをしていた家庭の子息ではあるが、やれば出来るをモットーに音楽に打ち込んでいたのだが、ブルックハールトなどの恩恵を受けるうちに高名な指揮者ヴァインガルトナーの弟子となり、さらにサロンに出入りするうちに、絵を営んでいた未亡人に見初められることとなる。

また、音楽院に付設されたバーゼルのスコラカントルムの創立者としても有名であり、そこで学んだ音楽家の数は数え切れない。最近ではサヴァールやアンドレアス・ショルを挙げて措けば良いだろうか。

また本人の実際の指揮活動は、その委嘱作品の趣味と同じく手堅い新古典主義の演奏様式であったようだ。

スイスの音楽評論家でドイツ評論家賞の現代音楽部門の審査員を長く務めるマックス・ニッフェーラーは、ニキ・ド・サンファルが夫ジャン・ティンゲリのザッハーに宛てた手紙からの言葉を引用して「彼の大家父長的で控えめな雰囲気は、メディチ家のパトロンを思い出させる」と記していることを伝え、そして「金満は、何かをすることで正当化する必要があるとして、そして音楽が仕事だと言うのが常であった」と書く。

トーマス・マンの作品「ファウステュス博士」には、実名の演奏家が何人か出てくるが、指揮者のブルーノ・ヴァルターやオットー・クレンペラーに並んで指揮者としてパウル・ザッハーが登場する。主人公の重要なヴァイオリン協奏曲を初演、1924年にベルンのアカデミーの講堂とチューリッヒのトンハーレで再演をする好意的な人物像として、39章では主要な登場人物と席を共にする。

「人間の内面的な運命を凌ぐ、外面的な権力は存在しない」、「芸術とは、精神の発露として、精神的価値の不思議な仲介者であり、またその創造者は、深い意味において人類の真の指導者である」と、29歳のパウル・ザッハーは紙に記しているようだ。1935年のことである。



参照:"Was du willst, das kannst du" von Max Nyffeler, FAZ vom 29.4.06
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