週末は、ユネスコ指定のライン中流域を二日かけて歩いた。ナーへ川がラインに注ぐビンゲンの町から、古い商業地バッハラッハまでの左岸である。
その区間の風物は、ローマ時代の船による移動やゲルマンの伝説の世界の痕跡のみならず、ドイツロマンティックの古城などで広く世界に知られている。ライン下りをした者ならば必ず目の行くラインシュタインやライヘンシュタイン城等を繋ぐ森の道が、川面から見上げる崖の上を通っている。
その間のビンゲンの森地域は、ドイツ国内の三割以上の植物が分布している多様な植生も特筆され、せせらぎに住む動物なども豊富と言われる。また同時に、そうしたスレートの土壌が、ワイン栽培などに使われて行く歴史がここに語られる。
そのワイン栽培は、嘗てはテラス状に耕地が広がって行ったとされるが、作業効率も良く陽を受け易いことからモーゼルなどに見られる傾斜のきつい斜面へと移って行った。
そうした歴史的変化は、ミッテルラインと呼ばれる幾分マイナーなワイン産地よりも、モーゼルにおいて、現在進行形で進んでいる。つまりEUのブドウ栽培に対する援助が半減して、高級ワイン市場へとのマーケティングが主となる政策から、特に効率の悪いモーゼルのワイン栽培風景は、遠くないうちに名だたる土地と高級ワインの地所を除いては激変すると言われている。休耕する斜面に対して援助がなされないことで、並み以下の地所が休耕して、そのような土地に買い手がつかなくなって来ているのが現実のようである。(上・右にビンゲンの町とナーへ川の合流点、左はリューデスハイムのワイン地所、下・アスマンハウゼンの地所を対岸に望む)
ミッテルラインの上の区間について限れば、リューデスハイムを対岸に見る左岸のビンゲンから河を下り右岸のアスマンハウゼンのシュペートブルグンダーの名地所を対岸に見て、それに続く右岸のロルッフ近辺の多くの休耕地を見ながら、左岸にあるバッハラッハに近づくとワインの質は上がってくるようだ。(下・スレートの土壌の傾斜地)
同じようなスレートの土壌で作られて、それほど変化は無いと思われるが、明らかにその成分の多様性が増してきて、スレートの味の強さに旨味が加わってくるようになる。比較しないと判らないが、土壌からすると対岸のリューデスハイムからロルヒ周辺のものよりも左岸のそれの方が遥かに個性が強そうである。
これらのリースリングをあまり口にすることが無いように、生産規模が限られているので、こうした名産品が今後どのように市場で振興されていくかは予想がつき難い。ただワイン栽培の土地経済規模に対する比率としては、モーゼルのそれに比べると限られている印象がある。
いずれにしても、あれだけの傾斜地での作業が、その出来に見合うのは至難の業である。その点からも、米国や極東市場に大きく依存するモーゼルのような激動はなくとも、今後市場から減反を迫られて、ワインの耕地面積は絞られて、近代以前のその昔のように減少していく傾向が予想される。
参照:
理性を埋める過去の美化 [ 文学・思想 ] / 2007-07-05
その区間の風物は、ローマ時代の船による移動やゲルマンの伝説の世界の痕跡のみならず、ドイツロマンティックの古城などで広く世界に知られている。ライン下りをした者ならば必ず目の行くラインシュタインやライヘンシュタイン城等を繋ぐ森の道が、川面から見上げる崖の上を通っている。
その間のビンゲンの森地域は、ドイツ国内の三割以上の植物が分布している多様な植生も特筆され、せせらぎに住む動物なども豊富と言われる。また同時に、そうしたスレートの土壌が、ワイン栽培などに使われて行く歴史がここに語られる。
そのワイン栽培は、嘗てはテラス状に耕地が広がって行ったとされるが、作業効率も良く陽を受け易いことからモーゼルなどに見られる傾斜のきつい斜面へと移って行った。
そうした歴史的変化は、ミッテルラインと呼ばれる幾分マイナーなワイン産地よりも、モーゼルにおいて、現在進行形で進んでいる。つまりEUのブドウ栽培に対する援助が半減して、高級ワイン市場へとのマーケティングが主となる政策から、特に効率の悪いモーゼルのワイン栽培風景は、遠くないうちに名だたる土地と高級ワインの地所を除いては激変すると言われている。休耕する斜面に対して援助がなされないことで、並み以下の地所が休耕して、そのような土地に買い手がつかなくなって来ているのが現実のようである。(上・右にビンゲンの町とナーへ川の合流点、左はリューデスハイムのワイン地所、下・アスマンハウゼンの地所を対岸に望む)
ミッテルラインの上の区間について限れば、リューデスハイムを対岸に見る左岸のビンゲンから河を下り右岸のアスマンハウゼンのシュペートブルグンダーの名地所を対岸に見て、それに続く右岸のロルッフ近辺の多くの休耕地を見ながら、左岸にあるバッハラッハに近づくとワインの質は上がってくるようだ。(下・スレートの土壌の傾斜地)
同じようなスレートの土壌で作られて、それほど変化は無いと思われるが、明らかにその成分の多様性が増してきて、スレートの味の強さに旨味が加わってくるようになる。比較しないと判らないが、土壌からすると対岸のリューデスハイムからロルヒ周辺のものよりも左岸のそれの方が遥かに個性が強そうである。
これらのリースリングをあまり口にすることが無いように、生産規模が限られているので、こうした名産品が今後どのように市場で振興されていくかは予想がつき難い。ただワイン栽培の土地経済規模に対する比率としては、モーゼルのそれに比べると限られている印象がある。
いずれにしても、あれだけの傾斜地での作業が、その出来に見合うのは至難の業である。その点からも、米国や極東市場に大きく依存するモーゼルのような激動はなくとも、今後市場から減反を迫られて、ワインの耕地面積は絞られて、近代以前のその昔のように減少していく傾向が予想される。
参照:
理性を埋める過去の美化 [ 文学・思想 ] / 2007-07-05