バイロイトのヴァーグナー音楽祭の初日の中継を聞いている。大抵は興味がない。しかし、今年は現監督の作曲家の孫ヴォルフガング・ヴァーグナーの後継者とされる下の娘カタリーナが演出デビューとのことで大々的に広報活動をしているからである。
気にかけないでもどうしても耳に入る。バイエルン放送を聞いていなかったのでその前番組は知らないが、開演間近の15時55分に始まり、予定通り進むのには驚いた。確かに、特に初日は少しでも遅れると入れなくなる。
さらに初耳だったのは、五チャンネル放送で中継していることで、そのように録音されていることをはじめて知る。管轄のバイエルン放送のラジオ音源はお馴染みである。そろそろ、制作物は不可能でも、常時廻っている固定カメラの映像ぐらいネットで流しても良いのではないだろうか。
とは言っても、全体の上演の質は、そのラジオから聞こえる雰囲気である程度は判るもので、今回もその前奏曲からどうしようもないなと思わせるのである。稽古における新聞報道等も、29歳のブロンド娘のヴァルキューレを中心にどうも仲良しムードのチームを思わせるもので、鉄のカーテンを敷いたと言う三幕の演出を待つまでも無さそうである。
子供騙しのふにゃふにゃギャグで、屋台骨がぐらぐらする史上最低水準の上演になりそうだと予想されるのである。
兄のヴィーラントの死を受けて、音楽監督となって永く君臨した弟ヴォルフガンクであるが、今回の娘のデビューが上手く行けば、音楽祭閉幕後に引退を表明してこの娘を後継者に指名するとの噂がある。腹違いの長女のエファも兄の娘ニィケも後継者レースに参加するゆえに、父親と疎遠な長女などは既に「父の死を待ってはいないけど、立候補する」と語っている。
追記1:ネットラジオで幕間に楽屋話を聞くと、ヒーローのヴァルターの新感性と旧い古典的規定を、自らの演出やデビューに措ける新旧世代の葛藤に掛けていることが伺い知れた。それなら尚更、子供っぽい散々な結果となりそうである。
追記2:どうも全ては美術学校の美学生物語となっているようだ。二幕は学校中庭のカフェテリアとアトリエ。
追記3:二幕後にカタリーナ自身の、場末の酒場での様な、濁声のインタヴューが流れる。エファとザックスの関係。「死のマイスター」、「生のマイスター」、「変異したマイスター」。肉体的に大きなマイスター。68年の団塊の世代の転向だろうか。
追記4:サルトルを読むザックス。ポストモダーン化するザックス。過激にモダーンを貫くベックメッサー。全くつまらない。
追記5:終演後、流石にブーイングは膨れ上がったが、それよりも拍手に全く精彩が無い。ブラボーも流石に殆どない。カタリーナに選ばれ招聘されたモーツァルト歌いのハンス・ザックスを責めようとは誰も思わない。
追記6:この記事のタイトルを変更。「ブロンドのヴァルキューレ」改めビックブラザーならぬ「アトリエのビッグシスター」。
LIVE: Bayern4
VIDEO: REUTERS
VIDEO: Probe - Katharinan Wagner (Bayern4)
参照:
メジャー音楽祭の黄昏 (クラシックおっかけ日記)
「聖なる朝の夢」の採点簿 [ 文化一般 ] / 2005-06-26
臨場のデジタルステレオ [ 音 ] / 2006-12-02
エルザの夢の無い決断 [ 文化一般 ] / 2006-11-20
追懐の怒りのブーレーズ [ 音 ] / 2006-11-08
福音師の鬼征伐 [ 文学・思想 ] / 2006-10-14
豊かな闇に羽ばたく想像 [ 文化一般 ] / 2006-08-20
ヴァルハラを取巻く現世 [ 文化一般 ] / 2006-08-17
経済成長神話の要塞 [ 文化一般 ] / 2005-10-13
少し振り返って見ると [ 雑感 ] / 2005-10-08
今年の花火は去年より [ 生活 ] / 2005-09-14
バイロイトの打ち水の涼しさ [ マスメディア批評 ] / 2005-07-24
小市民の鈍い感受性 [ 文化一般 ] / 2005-07-10
伝統という古着と素材の肌触り [ 文化一般 ] / 2004-12-03
気にかけないでもどうしても耳に入る。バイエルン放送を聞いていなかったのでその前番組は知らないが、開演間近の15時55分に始まり、予定通り進むのには驚いた。確かに、特に初日は少しでも遅れると入れなくなる。
さらに初耳だったのは、五チャンネル放送で中継していることで、そのように録音されていることをはじめて知る。管轄のバイエルン放送のラジオ音源はお馴染みである。そろそろ、制作物は不可能でも、常時廻っている固定カメラの映像ぐらいネットで流しても良いのではないだろうか。
とは言っても、全体の上演の質は、そのラジオから聞こえる雰囲気である程度は判るもので、今回もその前奏曲からどうしようもないなと思わせるのである。稽古における新聞報道等も、29歳のブロンド娘のヴァルキューレを中心にどうも仲良しムードのチームを思わせるもので、鉄のカーテンを敷いたと言う三幕の演出を待つまでも無さそうである。
子供騙しのふにゃふにゃギャグで、屋台骨がぐらぐらする史上最低水準の上演になりそうだと予想されるのである。
兄のヴィーラントの死を受けて、音楽監督となって永く君臨した弟ヴォルフガンクであるが、今回の娘のデビューが上手く行けば、音楽祭閉幕後に引退を表明してこの娘を後継者に指名するとの噂がある。腹違いの長女のエファも兄の娘ニィケも後継者レースに参加するゆえに、父親と疎遠な長女などは既に「父の死を待ってはいないけど、立候補する」と語っている。
追記1:ネットラジオで幕間に楽屋話を聞くと、ヒーローのヴァルターの新感性と旧い古典的規定を、自らの演出やデビューに措ける新旧世代の葛藤に掛けていることが伺い知れた。それなら尚更、子供っぽい散々な結果となりそうである。
追記2:どうも全ては美術学校の美学生物語となっているようだ。二幕は学校中庭のカフェテリアとアトリエ。
追記3:二幕後にカタリーナ自身の、場末の酒場での様な、濁声のインタヴューが流れる。エファとザックスの関係。「死のマイスター」、「生のマイスター」、「変異したマイスター」。肉体的に大きなマイスター。68年の団塊の世代の転向だろうか。
追記4:サルトルを読むザックス。ポストモダーン化するザックス。過激にモダーンを貫くベックメッサー。全くつまらない。
追記5:終演後、流石にブーイングは膨れ上がったが、それよりも拍手に全く精彩が無い。ブラボーも流石に殆どない。カタリーナに選ばれ招聘されたモーツァルト歌いのハンス・ザックスを責めようとは誰も思わない。
追記6:この記事のタイトルを変更。「ブロンドのヴァルキューレ」改めビックブラザーならぬ「アトリエのビッグシスター」。
LIVE: Bayern4
VIDEO: REUTERS
VIDEO: Probe - Katharinan Wagner (Bayern4)
参照:
メジャー音楽祭の黄昏 (クラシックおっかけ日記)
「聖なる朝の夢」の採点簿 [ 文化一般 ] / 2005-06-26
臨場のデジタルステレオ [ 音 ] / 2006-12-02
エルザの夢の無い決断 [ 文化一般 ] / 2006-11-20
追懐の怒りのブーレーズ [ 音 ] / 2006-11-08
福音師の鬼征伐 [ 文学・思想 ] / 2006-10-14
豊かな闇に羽ばたく想像 [ 文化一般 ] / 2006-08-20
ヴァルハラを取巻く現世 [ 文化一般 ] / 2006-08-17
経済成長神話の要塞 [ 文化一般 ] / 2005-10-13
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