アフガニスタンでNATO軍ISAFに参加していたポーランド兵七人が終身刑を受けた。活動中に、女子供を含む村人六人を殺害した罪である。十八落下傘部隊の七人は、攻撃されたと反論していたが、隊の携帯電話カメラによる手榴弾と自動小銃による攻撃映像が、初めての攻撃を受ける前の蛮行の動かぬ証拠となったと言う。
ポーランド軍は、アフガニスタンには1200人、イラクには900人が活動参加している。刑を受けた家族などは言う。「死んだ方が良かった。アフガニスタンで殺されていれば、英雄となり、家族は年金を貰えたのに、今や戦争犯罪人だ」。実際二日後には、この部隊から攻撃を受けて犠牲者が出たのである。
ポーランドと良く似た極東の日本国は、一人前の国として国連の活動のもと軍隊を派遣したいようである。原理原則があっても、不慮の事故は必ず起こる。その法務大臣が言うように、怨念を重視する量刑への国民の切望から、軍法会議か陪審員制度かは知らないが、こうした大量殺人戦争犯罪にも死刑判決が支持されるのだろうか。
鳩山法務大臣の発言は法曹関係者には話題となっているのだろうが、明らかに優秀な日本法務省とのアジテート共演でありえる「友達はテロリスト」発言は、より一層興味を引く。
これにも関連するもう少し高度な話題である。それはここでも何度も取り上げているショイブレ内務大臣の対テロ対策法案とその憲法裁判判定に因む話題である。先頃、CDUの要請を受けて、憲法裁判所の第二判事ウド・ディ・ファビオが国防軍将校や外交官ならびに官僚を集めてこの問題に関してベルリンの安全保障連邦研究所にて演説した。
その内容は、「内外の事象の境が無くなった内側からの宣戦布告のないテロ攻撃の時代」における議論のあり方と内相のその時代に即した秩序維持への提言に対しての手厳しい学術的見解となった。
その時代の要請に合わせた治安維持や機能については、「グローバルなテロ活動に対する国の責務権限への要請」は無いと明確に否定して、歴史的に見てその機能の低下は背景にある常態の危険性を審査してみなければいけないとした。つまり、内外の法秩序は、其々警察機能と軍機能において、それは文明化の成果として存在していることを強調する。その例として、個人が攻撃されたにも拘らずワールドセンタービル事件にNATO軍が同盟を表明したのだが、このような場合もその二つの機能、つまり、テロ攻撃と戦闘状態は別けられているとしている。
そしてもっと辛辣に、CDUやショイブレ博士が指す、時代に合わなくなった内務機能への懐疑や推進した法的論争が、また敵への処罰の法制化自体が刑法改変学者と同じく、国機構への絶望を示しているものであって、彼らは一列に並んで大きな声で現代の国機構に対してお別れの言葉を唱えているに過ぎないと指摘する。
つまり、「テロ時代」の要請に合わせた為政者の内務権限の拡大強化の法論争は、法と倫理をもった公僕である国の為政者の自己遵守でしかないと非難している。そして、知的に非常事態を予測するのは面白かろう、とこれらの御用法学者やCDUの二人の担当大臣を痛烈に揶揄するのを忘れない。
こうした議論に口を閉ざすことは問題のタブー化とは異なり、こうした議論を検閲すると、本人の主張する「自由の文化」における市民社会の耐久度や予測可能度を基本に据えた保守主義における安然秩序を強調したようだ。
市民社会のヒステリーを諌め市民秩序を重んじる背景には、対テロ法案強化による「内なる戦線」は一般に危惧されている以上に、欧州大陸上で米軍がやったような「拷問」や「射殺」が横行する暗い時代が予想されるからであり、実際にそれだけの「テロリストの友達の輪」の情報を軍の情報局が握っていることが知られている。
「戦時下と平和時の市民の権利を峻別して」、「EU内での内外管轄権限への譲渡に道を開く」とするショイブレ内務大臣の上のような卓越した政治手腕は、こうした暗黒時代への舵取りに向けられており、「自由のための公的暴力の行使は国連憲章にそしてEUの条約に反している」とする明確な法解釈に真っ向から対決していることを指摘したこの法曹界からの反論の意味はあまりにも大きい。
門外漢でも非常事態へのカール・シュミットの解釈ぐらいは頭に浮かぶが、戦争の出来る国どころか対テロ対策の法秩序を支えられるのは、あまりにも優秀な市民と卓越したジャーナリズムやそれに狡猾で強大な権力を持った政治家や行政に違いない。
参照:
"Selbstachtung des Rechtsstaates", Patrick Bahners, FAZ vom 29.11.2007
保守的な社会民主主義 [ 歴史・時事 ] / 2007-11-13
ドイツ語単語の履修義務 [ 女 ] / 2007-07-16
キラキラ注がれる水飛沫 [ 暦 ] / 2007-06-05
推定無罪の立証責任 [ 雑感 ] / 2007-04-21
秘密の無い安全神話 [ 雑感 ] / 2007-02-11
顔のある人命と匿名 [ 歴史・時事 ] / 2007-02-01
イドメネオ検閲の生贄 [ 音 ] / 2006-09-29
自尊心満ちる軽やかさ [ ワールドカップ06 ] / 2006-07-12
ポーランド軍は、アフガニスタンには1200人、イラクには900人が活動参加している。刑を受けた家族などは言う。「死んだ方が良かった。アフガニスタンで殺されていれば、英雄となり、家族は年金を貰えたのに、今や戦争犯罪人だ」。実際二日後には、この部隊から攻撃を受けて犠牲者が出たのである。
ポーランドと良く似た極東の日本国は、一人前の国として国連の活動のもと軍隊を派遣したいようである。原理原則があっても、不慮の事故は必ず起こる。その法務大臣が言うように、怨念を重視する量刑への国民の切望から、軍法会議か陪審員制度かは知らないが、こうした大量殺人戦争犯罪にも死刑判決が支持されるのだろうか。
鳩山法務大臣の発言は法曹関係者には話題となっているのだろうが、明らかに優秀な日本法務省とのアジテート共演でありえる「友達はテロリスト」発言は、より一層興味を引く。
これにも関連するもう少し高度な話題である。それはここでも何度も取り上げているショイブレ内務大臣の対テロ対策法案とその憲法裁判判定に因む話題である。先頃、CDUの要請を受けて、憲法裁判所の第二判事ウド・ディ・ファビオが国防軍将校や外交官ならびに官僚を集めてこの問題に関してベルリンの安全保障連邦研究所にて演説した。
その内容は、「内外の事象の境が無くなった内側からの宣戦布告のないテロ攻撃の時代」における議論のあり方と内相のその時代に即した秩序維持への提言に対しての手厳しい学術的見解となった。
その時代の要請に合わせた治安維持や機能については、「グローバルなテロ活動に対する国の責務権限への要請」は無いと明確に否定して、歴史的に見てその機能の低下は背景にある常態の危険性を審査してみなければいけないとした。つまり、内外の法秩序は、其々警察機能と軍機能において、それは文明化の成果として存在していることを強調する。その例として、個人が攻撃されたにも拘らずワールドセンタービル事件にNATO軍が同盟を表明したのだが、このような場合もその二つの機能、つまり、テロ攻撃と戦闘状態は別けられているとしている。
そしてもっと辛辣に、CDUやショイブレ博士が指す、時代に合わなくなった内務機能への懐疑や推進した法的論争が、また敵への処罰の法制化自体が刑法改変学者と同じく、国機構への絶望を示しているものであって、彼らは一列に並んで大きな声で現代の国機構に対してお別れの言葉を唱えているに過ぎないと指摘する。
つまり、「テロ時代」の要請に合わせた為政者の内務権限の拡大強化の法論争は、法と倫理をもった公僕である国の為政者の自己遵守でしかないと非難している。そして、知的に非常事態を予測するのは面白かろう、とこれらの御用法学者やCDUの二人の担当大臣を痛烈に揶揄するのを忘れない。
こうした議論に口を閉ざすことは問題のタブー化とは異なり、こうした議論を検閲すると、本人の主張する「自由の文化」における市民社会の耐久度や予測可能度を基本に据えた保守主義における安然秩序を強調したようだ。
市民社会のヒステリーを諌め市民秩序を重んじる背景には、対テロ法案強化による「内なる戦線」は一般に危惧されている以上に、欧州大陸上で米軍がやったような「拷問」や「射殺」が横行する暗い時代が予想されるからであり、実際にそれだけの「テロリストの友達の輪」の情報を軍の情報局が握っていることが知られている。
「戦時下と平和時の市民の権利を峻別して」、「EU内での内外管轄権限への譲渡に道を開く」とするショイブレ内務大臣の上のような卓越した政治手腕は、こうした暗黒時代への舵取りに向けられており、「自由のための公的暴力の行使は国連憲章にそしてEUの条約に反している」とする明確な法解釈に真っ向から対決していることを指摘したこの法曹界からの反論の意味はあまりにも大きい。
門外漢でも非常事態へのカール・シュミットの解釈ぐらいは頭に浮かぶが、戦争の出来る国どころか対テロ対策の法秩序を支えられるのは、あまりにも優秀な市民と卓越したジャーナリズムやそれに狡猾で強大な権力を持った政治家や行政に違いない。
参照:
"Selbstachtung des Rechtsstaates", Patrick Bahners, FAZ vom 29.11.2007
保守的な社会民主主義 [ 歴史・時事 ] / 2007-11-13
ドイツ語単語の履修義務 [ 女 ] / 2007-07-16
キラキラ注がれる水飛沫 [ 暦 ] / 2007-06-05
推定無罪の立証責任 [ 雑感 ] / 2007-04-21
秘密の無い安全神話 [ 雑感 ] / 2007-02-11
顔のある人命と匿名 [ 歴史・時事 ] / 2007-02-01
イドメネオ検閲の生贄 [ 音 ] / 2006-09-29
自尊心満ちる軽やかさ [ ワールドカップ06 ] / 2006-07-12