Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

脱思想・脱原発・脱体制

2008-01-29 | 歴史・時事
ヘッセン市民は高嶺の見物と洒落ても良いだろう。混迷を極めているが、こうした時に政策の寄り合わせや論議を踏まえて、民主的な方法で政治的な解決を行なえるかどうかが、政治家に問われているのである。

与党のコッホ首相がミュンヘンで起った暴力事件などを挙げて、その問題を外国人の移民を引き合いに社会治安の問題にすり替えてしまったものだから、野党のSPDはそれを非難し易かった。今日でも、反テロ政策や治安維持を盾に、防衛当局として、コッホを支持する声があるからCDUの一部はショイブレ内相と同じで話にならない。

実際、それは問題発言に他ならなかった。しかし、そうした青少年の問題は教育問題であり、それこそは連邦州の管轄にあり、州民は自らの教育システムを規定することが出来る。州内に住む有権者にとっては特に子供がいれば最重要問題なのである。

ドイツの教育システムは、ここでも取り上げているように様々な問題があるが、塾に頼らない全日制の小学校や均一化の総合学校と言われるシステムへの要求とか、またはエリート教育とかの必要性など多々あり、一口に教育の機会均等と叫んでも容易ならざることは断わるまでもない。詳しくこれを語ればやはり自身の意見にしかならない。

元々、SPD社会民主党にとっては、ポスト最低賃金制度が党を挙げての大きな取り組みであるが、コッホの挑発的な発言を否定的イメージ戦略に結びつけた。それに対してCDUは、議席獲得への最低得票率5%ハードル突破を狙う左派党に議席を奪取されないように投票率を上げようと努力したようだが至らなかった。

昨日の開票番組でローカルの様々な争点を見ると、州議会選挙は国政とは異なり地域によって多種多様な争点が存在している事が知れた。最も興味深く思えたのがそのもの身近な生活環境問題である。

一方にはフランクフルト空港の拡張に伴う新滑走路航路下の立ち退きや騒音問題などがあり、一方には国政で決まった原子力発電からの脱皮を柱とする新エネルギー政策がある。片や経済的な成果や貢献を挙げて、片や環境問題とする構図は、二十世紀後半に世界の先進工業国で繰り返された政策論争であり、一方に自由資本主義があり一方に社会主義的な思想の葛藤が続いたのは周知のことである。

しかし、今回の地元の様子を見れば分かるように、煙を上げる石炭発電所の町で市民は、「自らの環境のためなら生活改善を含めて大抵の努力はするが、冷蔵庫を使わない者は居まい」と言うように、もしくは「風力発電は美観や観光資源としての自然の価値を下げる」とする市長の発言に、「少々のことよりも原子力発電を止めることがもっとも優先」とする主婦の声が全てを語っていた。

つまり、議論は多極化して一つの解決方法を目指すことが出来ない世界であり、タブー無き政策の緑の党の伸び悩みとその活動への期待こそがここに全て現れている。

それは、教育の問題として、個人の経済活動を築く政策としての社会のあり方への議論ともなっている。それゆえに、左派党の議会進出は、その支持層の多くが失業者であり、もしくは公務員や労働組合組織員であることを考えれば、上記のような多極化した議論ではすり落ちてしまう問題に光を当てる。謂わば、二十年ほど前ならば極右政治団体が失業者の声を代弁して、「外国人に労働を奪われた」とすればそれで済んだ問題が、今は「グローバル経済の中の民営化で公共従事の機会が失われ、労働者には市場論理の中で教育の機会も与えられてない」と言い換えて、尚且つラフォンテーヌ代表のように外国人排斥をそこに旨く混ぜ合わせれば都合の良い配合になるのである。

その結果、左派党がある程度の議席を獲得して、社会民主党左派が支持を食われ、社会民主党によって緑の党がエネルギー政策を専売特許とは出来ず、FDP自由党が緑の党のアナーキーな市民性を奪えば、CDUキリスト教民主同盟が経済界を牽制して左派党以上に統制を図ろうとするとき、どうしても今のような卍巴のように入り乱れた政局が発生する。

だから、特に州に権限がある政治課題を得票率を鑑みながら最優先に調整して、実行していくことこそが今の政治課題なのである。そして、国民二大政党であるCDUとSPDが其々高齢者と働き盛りの若い世代に支持層が別れてきていることは、少子化や高齢化の進む先進国の今後の政治地図を考察する場合大きな要素になってくると思われる。因みに男性にはCDU・FDPの連立が、女性にはSPD・GRUENENが好まれているらしい。



参照:
ローラント・コッホ負ける [ 生活 ] / 2008-01-28
葡萄の地所の名前 [ ワイン ] / 2006-01-21
ドイツ語単語の履修義務 [ 女 ] / 2007-07-16
一緒に行こうか?ネーナ [ 女 ] / 2007-06-18
中庸な議会制民主主義 [ マスメディア批評 ] / 2007-05-13
煙に捲かれる地方行政 [ 生活 ] / 2006-12-12
日曜の静謐を護る [ 生活 ] / 2006-11-11
麻薬享受の自己責任 [ 生活 ] / 2006-12-08
正書法のフェデラリズム [ 歴史・時事 ] / 2005-07-20
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