Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

「ナチは出て行け」の呟き

2019-02-07 | マスメディア批評
先週気になる記事が出ていた。流行り言葉「Natzis raus」が見出しになっている。第一面横の所謂社説コラムなので目を引く。この言葉が意味するものは誰にも明らかで、所謂外国人排斥のパロール「Ausländer raus」つまり「外国人出て行け」と叫ぶレイシストのそれを裏返したものだ。新聞によるとその言葉が公共文化波ドィチュラントクルテューアの呟きとして書かれているらしい。要するに社会的に少なくともネット上は認知された表現となる。

新聞は同じ状況として「右翼」というのはもはや健全な保守派を指すのではなくて同時に「極右」を指すようになっていると状況を説明する。つまりネット住民にとっては最初のパロールを以って「私はそこに属することの無い真っ当な人間」であると主張することと同意義らしい。編集者は、ラディオ局の呟きは、そもそもネットにおける荒らし右翼に対して、「ナチは出て行け」となっていると説明する。

一体どこに、ポーランドかフランスかデンマークかベルギーかオーストリアへと追い払うのかという疑問は別にして、そもそものナチにおける外国人を人種的に差別した暴力的排斥は刑に問われて、rausではなくrein、即ち追放でなく拘束による治安だと書く。つまりネット上での匿名のそれはナチの方法ではなく、身を隠しているのでそれではないとしている。

寧ろ問題点は軽々にナチ呼ばわりすることで喜ぶのは正々堂々と出てくる本物のネオナチであり、政治的には右翼が悪いとされるのも例えばキリスト教社会主義の民主主義的な価値観の欠落に起因するとしていて、要するに「右翼も極右変わらず」悪くされるその背景について説明する。

否定されるナチ自体が他の意見を封殺するそのやり方の方が、過去への評価の問題以上に悪いとする。当然のことながら思想の自由とそれを担保する憲法の解釈への議論、そうした現在世界中で顕著な動きが大まかに示唆される。ここまで読めばどうもこれは呟き問題でもあり言語表現の問題でもあるように思う。

この高級紙は第二の勢力である政党AfDに対して厳しくその実態を暴き、糾弾し続けているが、ここではとても慎重にそれらに対するカウンターの在り方を諌めている。ネットでは音楽家ではイゴール・レヴィットなどが最も激しくそのカウンターとして活動しているが、それ以上にやはり監視することによる牽制も重要だ。

連邦共和国の音楽家では何人かはこの新聞紙上でも注目に値するその言動が問われた。最も有名なのは指揮者クリスティアン・ティーレマンだ。この指揮者に関しては、その演奏会は一度行けば十分だったが、最も長くウォチャーを続けていて、キリル・ペトレンコなんかよりも長いお付き合いである。そのような切っ掛けになる新聞記事があったのは、同じ指揮者インゴ・メッツマッハーである。これは20世紀の音楽も得意にしていてアンサムブルモデルなども指揮していたので、誰もがリベラルな音楽家として疑わない。ベルリンの演奏会で、プフィッツナーとこともあろうにリストの前奏曲を前後のコンサートで取り上げて十分な釈明が出来ていないというものだった。その方の組織ではリストアップされているに違いない。その他過去の人では歌手エッダ・モーザーなども明らかにこの範疇に入る先導者である。

そのティーレマン指揮の演奏会には人が入らなくなった。エルブフィルハーモニーでは当日まで前売り券が出ていた。戻り券かどうかは分からないが、ラトル指揮ロンドン交響楽団などではそうした余剰券がそもそも存在せずありえない。そして同じ興行師プロアルテが扱っていて、なんと驚くことに224ユーロも徴収している。同じ時期にベルリナーフィルハーモニカーをネゼセガンが指揮してもまともに興行すれば180ユーロほどしか請求されない。興業師の儲けが如何ほどかは直ぐに算出可能だ。「広告費や手間などを掛けなければ君たちの演奏会など誰も来ないよ」と、彼らに言わせたらこうなる。つまり売れ残るのは当然かもしれないが、それでもラトルの指揮や知名度にはそれなりの価値があるのだろう。

エルブフィルハーモニーも一巡二巡したので、通常の売れ方の近づいてきている。偶然にもティーレマン登場の後はNDR管弦楽団を振ってメッツマッハーが出る。NDRは「ユダヤの小さなグノーム如きで、アルベリヒのようだ」と、ペトレンコを散々侮辱したが、なにかハムブルク周辺にはその手の根が蔓延っているのだろうか。街の印象では昔からそのような感じはないのだが、南と比較して根暗で開放的な感じは薄く、丁度大阪のおっさんが笑いながら反対の方向に指して道を教える雰囲気に近い。シュピーゲル社の本拠地でもあるSPDの牙城だが、長期低落傾向の左派の虚飾のようなものをそこに感じる ― まさしくそれがAfDを育んだ。



参照:
独精神についての疑問視 2007-10-13 | 音
言葉の乱れ、心の乱れ 2006-10-28 | 女
ドレスデンの先導者 2018-08-29 | 歴史・時事
ふれなければいけない話題 2015-06-29 | マスメディア批評
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