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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

年金「現役所得の5割」確保・・・子供でも分かるウソ

2009-02-24 10:13:25 | 時事/金融危機
■「おくりびと」アカデミー外国語映画賞受賞■

今朝の読売新聞の一面は「おくりびと」がアカデミー賞外国語映画賞受賞のニュース。
最優秀作品賞他8賞をインドとハリウッド合作の「スラムドック」。
両作品とも未見なので何とも言えませんが、
前評判の高いイスラエル映画「戦場でワルツを」を抑えての受賞との事。

芸術の世界の話なので、あまり勘ぐるのも良くありませんが、
なんだかアメリカが媚びているようで、スッキリしません。
経済危機の後、アメリカの目がアジアに向いていると捉えるべきなのか、
それとも、今後来るべきアメリカ国債の消化をにらんでのサービスなのか・・。
賞事態は多くの映画人の投票によるものなので、多分公平な評価なのでしょう。
それでもイスラエルの作品を避けるあたりは、時代を反映しているのでしょうか?

私自身はアカデミー賞を取った映画はロクな映画でないと思っているので、
どうでも良いといえば良い事なのですが。
ただ、現在の日本映画の実力は高いと思います。
毎年、何本かはドキドキする映画が作られています。
しかし、残念ながら、あまり大衆受けするものは少ないですね。
単館上映されて、好きな人が観に来る映画に、
世界レベルの映画がゴロゴロしているのに・・・・。

音楽も映画もある程度受け手に訓練が必要な事も確かで、
シネコンで上映される映画を何万本見た所で、
やはり、単館上映されるような映画を楽しむ感性は身に付かないでしょう。
例えば、何千冊漫画を読んだところで、
古典文学を楽しめる様にはならないのと一緒で、
大衆映画と、単館上映の映画は、映画的文法が全く異なります。

ただ、稀に、大衆性と先鋭性を兼ね備えた映画が誕生するのでワクワクします。
たとえば、貰ったチケットで見に行ったティム・バートンのバットマンに
度肝を抜かれるような感じ。
ああゆう、ポップで病的な感覚はハリウッドでなければ作れないでしょう。

日本映画の良作は、あくまでも生活感の強い映画。
多分、同じ日本人だから共感するんだろうなっていう、
ちょっとした仕草の魅力を感じたりします。
でも、不思議とカンヌはそんな映画にグランプリをあげちゃったりするから不思議。
今村監督の「うなぎ」はどう考えても、カンヌでグランプリってウソでしょう??

「うなぎ」に良く似た映画が、韓国のキム・ギドクの「魚と寝た女」。
単に、犯罪者と湖畔に住む女性という共通点だけだけど・・・。
キム・ギドクの映画は、観ていて気持ちよくない。イタイ。でも観てしまう。
近年、ヨーロッパで評価が高いようですが、さすが文化のレベルがアメリカとは違う。
韓流、韓流とさわぐどこかの国とは違って、ものの価値が良く分かっている。
もっとも、ヨーロッパでも分かっているのは一部の人達なのでしょうが、
その人達が、大衆に媚びる事無く賞を決めているのが、さすがは貴族の国。

キム・ギドクの近作は、オダギリ・ジョーが出演ですが、
オダギリ・ジョーの最高の演技は、「仮面ライダー・クーガー」ですよ。
競演の村田英雄の娘も良かったのですが・・。
この頃の爽やかな笑顔に比べたら、最近の長髪でダラダラしたオダギリ・ジョーは
100分の1も魅力が無い。
それがたとえ「ゆれる」であっても・・・・。
・・・あれ、ついついオタク路線に逸れてしまいました。

結局、難しい表情をして、文芸映画に出演している俳優も、
実はデビュー当時のエンタテーメント作品での魅力の方が上回っていたりして、
映画なんてもは、実に良く分からない代物だから楽しい。

■年金「現役所得の5割」確保■

同じ読売新聞の一面の見出しが[年金「現役所得の5割」確保]。
見出しだけ見れば、実に結構な事です。
2038年に厚生年金、基礎年金合わせて月額35万円いただける。
35万円あれば、充分暮らしていける。

・・・って、ちょっとグラフを良く見て下さい。
2009年の平均月収が35.8万円。
年金の給付水準が62.3%で22.3万円。

2038年が平均月収が76.6万円で、
給付水準が50.1%の35.9万円。

これって、どう見ても生活が苦しくなってますよ。
給付水準が下がっているのだから。

■基礎年金は税金で賄う=消費税率UP■

さらに、基礎年金分は税金で賄う事が前提なので、
多分消費税率は10%は優に超えているのではないでしょうか。

年金の給付水準が下がって、税率はUPですから、
生活はさらに困窮する事間違いありません。

■特殊出生率1.26%、賃金上昇率2.5%■

特殊出生率1.26%はまあ前提として、
問題は厚生年金の加入率でしょう。
2038年の年金負担世代のどのくらいの人が
厚生年金に加入しているかの方が問題。

非正規雇用が問題視されていますが、
アジアが台頭してきて日本の国際競争力が落ちる中
企業がインシャランス・コスト削減を目指すのは当然。
非正規雇用者は増えこそすれ、減ることは無いでしょう。

厚生年金加入率の低下は、出生率の低下よりも顕著に年金財政を圧迫します。

そして、賃金上昇率2.5%にも無理があります。
労働環境に国際化が進めば、
日本人の賃金は、減りこそすれ、増える事はありません。
もし、仮に2.5%の割合でベースアップが成されるのであれば、
インフレ率はそれを上回る筈で、実質的なベースダウンになります。

■デフレの時代に、インフレの試算■

現在の世界的な不況は当分続きそうで、
デフレ圧力が強まっています。
バブル以降、日本では10年間、デフレ傾向が続きました。

■今払われている年金は、今使われている■

日本の年金制度の最大の問題は、
「今払われている年金は、今使われている」という事を
理解している国民が少ない事です。

日本の年金制度は、北欧の様な「積み立て制度」では無く、
負担者が受給者を養う「相互扶助イ」制度です。

ですから、2038年に年金負担者が期待通りの人口いなければ、
年金制度事態が成り立ちません。

現在、年金財源は蓄えがありますから、
今後しばらくは直ぐに年金制度が崩壊する事は無いでしょう。
しかし、現在でも「厚生年金」は不足する「国民年金」に充当されて消えています。
さらに、年金資金は日本やアメリカの株を買い支えたり、
国債で運用されたりしています。

アメリカ経済が復活して、株価が上昇したり、
国債が確実に支払われれば問題ありませんが、
もし、アメリカがデフォルトという事態にでもなれば、
年金財源の多くの損失を免れないでしょう。

■新聞は誰の味方なの■

度々新聞批判で申し訳ありませんが、
新聞は誰の味方なのでしょう?
少なくとも、現役世代や若者の味方ではありません。

新聞の多くの読者が、既に年金受給者であったり、
今後、直ぐに年金受給者となる世代で、
さらに、新聞社の上層部も同じ世代に属しているのですから、
彼らは既得権者側の人間です。
政府の役人も、高い地位の人は同じです。

結局、年金設計の責任を負うべき人間が、
本当の意味で、恒久的に存続出来る年金制度を設計していない事に問題があるのです。
もし、その様な年金制度を設計するならば、
現状でも相当な負担を国民は強いられるはずです。

負担は次の世代(我々ですが)に持ち越して、
当然崩壊するシステムを延命するのが、
責任ある国家のやる事でしょうか?

■農村で自給自足を強いられてロシアの老人■

ソビエト連邦崩壊後、年金制度が崩壊したロシアでは
都市部で生活出来ない老人が、農村に流れて、
自給自足の生活で飢えを凌いだと言います。

これは、日本においてもあり得ない事ではありません。
現在のフリーターや非正規雇用者は将来年金の受給者にもなれず
そのまま行けば、生活保護の対象となってしまいます。
その負担を高い年金負担の上に、将来の負担者世代が負う事は不可能です。

ロシアは土地は国有財産でしたから、
老人が地方に流れても生活出来ましたし、
基本的はインフラはタダ同然だったので、住む所もあったでしょう。
(多少、電気、ガスは止まったでしょうが)
ところが、日本のネットカフェ難民には将来の住処もありません。

■日本の農業は成長産業では無く、セーフティーネット■

今、農業が注目されて、ブルータスなどはファッションの様に扱い始めています。
経済誌も今週の特集は農業だったりします。

しかし、農地が狭く、集約化の進んでいない日本の農地では、
世界に輸出して外貨を稼ぐような農業は不可能です。
石油が高騰すれば、漁業が採算が取れなくなるように、
農業も採算が取れなくなります。

農業生産に生産物の5倍のエネルギーをつぎ込む日本の現在の農業は
生産では無く、消費活動という事も出来ます。

しかし、自給自足という事を考えれば、
日本の狭い農地でも、人を養う事が出来ます。
ただ、自給自足もあくまでも土地(農地)があってこそ可能となります。
又、その前に住む場所の必要です。
農業が社会のセーフテイーネットになる可能性はゼロではありませんが、
農地の所有が固定化されている現代においては、
実現不可能な事です。

■年金資金での農地の借り上げと、地域通貨の試み■

今、農地は余っています。
多分、農地法が改正になって、一部農地の売買が自由化される事と思います。
その後どうなるか・・・
多分、大規模耕作が可能な土地は企業が買収していくでしょう。
ここに、農業作業者という職業が生まれます。
企業労働者ですが、昔で言えば小作です。

一方、非効率な農地は耕作放棄されて、
山村も過疎化から、無人化へと進んで行くでしょう。
これらの土地や家屋を年金資金で借り上げて、
年金難民の方達に供与する事は出来ないでしょうか。

この際に必要なのが、地域通貨の制度だと思います。
何故、地方の農家が存続出来ず、若者が都会に出てくるかと言えば、
地方の零細農家では現金収入が限られるからです。
では、相互の労働供与を地域通貨として流通させれば、どうでしょう。
本来、貨幣経済から切り離されていた労働を
地域の経済の中に取り込み、さらに地域通貨として循環させる。

はっきり言って、100年前の農村の生活に戻る訳ですが、
都会で飢え死にするよりマシですし、
過剰な社会保障コストが国家を滅ぼすよりも良いはずです。

但し、医療の問題が残ります。
ただこれも、保健制度のゼネラルサービスを見直して、
農村保健組合の様な簡素な保健制度を作り、
高度医療や無意味な延命治療を中止すれば良い訳で、
後は介護はやはり相互扶助、老人は値域社会全体で面倒を診るという事に。

何だか、中国の農村戸籍と都市戸籍のようですが、
農村に新たな魅力が生まれれば、若者を引き付ける事も可能かもしれません。

■後はやる気次第■

最大の問題は、一日コンピューターの前にいるような引きこもりが
農業を出来るかどうかですが、
生死が掛かれば、人間どうにでもなるモノで、
戦時中は皆、自給自足の様な暮らしをしていました。

少なくとも都会で浮浪者になるよりは、
いくらかマシな生活の様に思えますが・・・。
ただ、マルクスによれば、「一番豊かな国は働かずに暮らす人の多い国」だそうで、
実は浮浪者に溢れかえる国は、実は豊かな国なのかもしれません。
例えば、アメリカとか・・・・。

LAのダウンタウンの浮浪者の群れを見ると、
日本の将来がああならない事を祈るしかありません。