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日銀の追加緩和は米国債金利で決まる

2014-07-04 03:05:00 | 時事/金融危機
 

■ 金融緩和が米株式市場を押し上げる理由 ■

アメリカの実体経済の回復は力強さに欠けている一方で、ダウやナスダックなど米株市場は市場最高値を更新しています。

一般的には「世界的な金融緩和によってダブついた資金が株式市場に流入する為」と説明されますが、もう少し詳しく見ると、金融緩和の別の姿が見えて来ます。

2010年9月にマイクロソフトは約4000億円の社債(3年債)を発行しましたが、その金利は0.875%。マイクロソフトの投資格付はAAAですから、低い金利で社債市場で資金調達が可能です。

一方、マイクロソフトの株式の配当利回りは直近で2.56%。単純に比較は出来ませんが、マイクロソフトは株式を発行して資金を調達するよりは、社債を発行した方が安く資金調達が可能です。


マイクロソフトが社債を始めて発行したのは2009年ですが、この時の社債発行の目的は「自社株買い」でした。当時、リーマンショックの影響もあってマイクロソフトの株式も価格が下落していました。そこで、安い金利で社債を発行して、値下がりした自社株を買う事で、株価を維持すると共に、株式の配当による支出を圧縮したのです。

株価維持はマイクロソフト自身が新株を発行する時に有利になると同時に、投資家の利益にも繋がります。

この様に、現在の米株市場の高値は、「自社株買い」に支えられている事はもっと注目されるべきでしょう。

そして、米株価とゆるやかにリンクする日本の株価は、間接的に米国の「自社株買い」の影響を受けていると言えます。

■ 米国債の低金利が債権市場を支えている ■

社債市場の低金利は金融緩和が支えています。これも、緩和資金が流れ込んだ為と説明されますが、ちょっと違った視点から眺めてみたいと思います。

現在、米国10年債の金利は2.64。3年債の金利は0.95です。
米国債は言わずと知れた「債権の王様」ですから、その他の債権に対して金利は低くなります。(価格は高い)

債権のヒエラルギーを考えるならば、米国債金利をボトムとして、それぞれの債権のリスクに見合った金利が割り振られて行く事になります。要は、米国債金利を抑制しておけば、債権市場の金利も抑制される事になります。その結果がジャンク債の金利ですら5%台という現象として現れます。

■ 米国債を勝ているのは誰なのか? ■

米国債金利はテーパリングの開始予測で一時10年債の金利が3%を超えましたが、その後は現在の水準に低下して来ました。資金が米国債に流入しているのです。

米国債へ資金を移動させている最大の原因は、「地政学的リスク」です。米国債金利が上昇すると世界の何処かで危機は発生します。最近はウクライナと中東で危機が高まり、資金が新興国から米国へと回避しています。

米国債はドルと同等お流動性があるので、一時的に資金を置いておくには便利な場所です。ですから世界を徘徊する過剰流動性は、新興国でリスクが高まると、一時米国債に集まると考える事が出来ます。

一方、過剰流動性だけでは米国債の金利がピーキーに変化してしまいます。をれを防ぐ為には安定して米国債を買い続ける勢力が必要です。従来は日本や中国、サウジアラビアなどがこの役割を担って来ました。

しかし、日本は貿易赤字国に転落した事から米国債の購入額も緩やかに減少しています。一方、中国も表向きは米国と対立姿勢を見せているので、積極的に米国債保有を増やす訳には行きません。(ただ、中国は米国債金利が上昇するとロンドン市場当たりで密かに買い支えている様ですがが・・・)

■ 注目されるベルギーの名義貸し ■

ウクライナ危機でロシアが米国債を売却したのではないかと憶測が流れた時、にわかに注目されたのがベルギーです。この時期、ベルギーが米国債保有額を大幅に拡大したからです。

これはロシアが売却した米国債をベルギーが買い支えたのでは無く、ベルギーが米国債保有の名義貸した結果です。

では、ベルギーは誰に名義貸しをしたのか?表立って米国債を保有しにくいロシアか、或いは中国か?

テーパリングで表面的には米国債の購入額を縮小しているFRBか?
それともアメリカに脅された日本か・・・。
ここから先は債権のプロでも知る事は出来ません。

■ 米国債金利を低く抑える事でバランスする市場 ■

現在の世界の市場は「低金利の資金」に支えられています。そして、そのシステムの要は米国債金利です。

こうして考えると、米国債の金利が上昇する時、世界は新たな危機を創出して米国債への資金誘導を試みるのかも知れません。ただ、危機はどんどんエスカレートしますし、金融市場の歪も拡大して行きます。

■ ステルスで進行している次の危機 ■

現在の金融市場は安定している様に見えます。リーマンショックの影響も徐々に薄らいでします。しかし、これは「不自然な低金利」によって支えられています。

米国がテーパリングを勧める一方で、不足する資金は日銀やECBが補う必要があります。日銀に対する追加緩和の期待は、国内景気を理由にしてはいますが、実はFRBのサポートが主目的では無いでしょうか。

米国債金利が上昇し始めた時、日銀は追加緩和に踏み切ると私は予測します。決して国内景気では日銀は動かないのでは無いでしょうか?