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冷静にウクライナ戦争を眺めてみる・・・ロシアの目的

2022-05-27 04:16:52 | 時事/金融危機

ウクライナの戦闘状況 時事通信より

 

ウクライナの州区分地図

 

■ ドンバス解放と見せかけた戦争? ■

ウクライナ戦争は西側の報道は全くデタラメですが、一方でロシアの報道もどこまで真実か分かりません。

ロシアが戦争に踏み切った理由は「ネオナチに虐殺されてうるドンバス地方(ドネツク州、ルガンスク州)の住人を救うためにネオナチを排除する」というものでした。この2州は2014年のウクライナ騒乱(マイダン革命)以降、ロシア系住人がネオナチ勢力(アゾフ大隊)の軍事攻撃を受け、内戦状態が続いていました。住人達はアゾフによる砲撃を恐れて地下室で寝起きする日々が8年間続きました。

ロシア国内では「同胞を救え」という声が高まる中、プーチン大統領は2月24日にウクライナに侵攻します。実はドンバス地方では2月16日よりロシア系住民に対する攻撃がエスカレートしており、2月25日にはウクライナ軍による総攻撃が開始されるという情報をロシアが掴んでいたとの情報も有ります。総攻撃を阻止する為にプーチンは進軍した。(ロシア寄りの味方ですが)

ロシア進軍の表の理由は「ドンバス地方の2州の分離独立を達成する」事であり、その為に「ウクライナのネオナチを殲滅」する事でした。しかし、ウクライナ戦争のもう一つの目的はウクライナのNATO加盟の阻止です。バイデン政権はウクライナをNATOを前のめりに進める事でロシアに圧力を強めていました。ロシアにとって長い国境線を接するウクライナがNATOに加盟する事は、安全保障上けっして黙認出来るものでは無い。

ここで、上のウクライナの地図を見てみます。ドンバス地方のドネツク州は4番、ルガンスク州は11番ですが、ロシア軍は現在、黒海沿岸の南部の諸州も制圧しつつあります。ドネツク州に隣接するサポリージャ州(7番)、ヘルソン州(20番)はほぼロシア軍が抑えたオデッサ州(14番)まで抑えるとウクライナは「陸封」されますが、ウクライナ軍はヘルソンの西側で必死にロシア軍に抵抗しています。

「プーチンはウクライナの東部と南部を制圧して戦争を終結させ、この地域を「小ロシア共和国」として独立させたい」という噂がネットでは流れています。ロシアの安全保障上、ウクライナを黒海から切り離して、ロシアとの間に軍事的干渉地帯を作る事はあり得る話です。

 

■ ドンバス地方はロシア国民の戦争支持を得る為のエサ ■

いかにプーチンと言えども国民の支持しない戦争を遂行する事は困難です。ロシア国民の7割以上がウクライナ侵攻を支持していますが、それは「同胞を救う」という大義が有るから。

これが仮に「ウクライナのNATO加盟を阻止する為に戦争を始める」と言ったら、ロシア国民は納得したでしょうか。答えはNOです。ウクライナがNATOに加盟する事で軍事的緊張は高まりますが、それによって直ぐに戦争が起きる訳では無いとロシア国民は考えるはず。これでは国民が戦争を支持する理由としては弱い。

ロシア国内では2014年から継続的にアゾフによるドンバス地方のウクライナ住人への攻撃や虐殺が報道されて来ました。ロシア国民は「同胞を救うためにプーチンはウクライナに侵攻すべきだ」という声が高まっていた。

日本も戦前、「鬼畜米英の支配からアジアを開放すべきだ」という国民の声の高まりで戦争に突入しました。当時、日本軍の上層部は戦争に否定的だった。アメリカに勝てない事を理解していたからです。しかし、民主主義では政権は国民の声に逆らえません。当時、朝日、読売、毎日といった大手新聞は連日「戦争すべき」という論調を展開し、国民を戦争へと扇動して行きました。

今回のウクライナ戦争で西側報道が捏造だらけで陰謀論界隈は「プーチン押し」の傾向が在りますが、冷静に考えればプーチンがドンバスの住人の悲劇を利用した事が見えて来ます。

■ 戦争を長引かせたい米露 ■

アメリカは大量の武器支援によってウクライナ戦争を長期化させています。一方でロシアもウクライナ戦争を意図的に長期化させています。

ロシアは初段のミサイル攻撃でウクライナの防空網をある程度潰していますが、しかしミサイル攻撃の規模は、イラク戦争におけるアメリカやNATOに比べると数分の1程度です。本来は敵の航空機を撃ちもらさない為に空港施設などは徹底的に破壊されますが、今回は中途半端な攻撃でウクライナは少数ですが戦闘機を温存している。これがロシア軍の航空機を迎撃したりしています。

この「中途半端な制空権」が理由かは分かりませんが、ロシア軍は地上戦において航空支援を一切していません。本来は制空権を持った側が、敵陣営に爆撃を行って地上戦力を支援しますが、そういうシーンがウクライナ戦争では殆どありません。「ウクライナ人の人命を守る」為に航空爆撃はしていないとする説も有りますが、郊外の戦闘においても航空機支援は殆ど行われていな様です。

一方、アメリカも最新鋭の榴弾砲こそ供与しましたが、戦闘機や多連装ロケットの様な装備の提供は拒否しています。ドイツも戦車の供与を拒否しています。ポーランドは旧式の戦車をウクライナに供与しましたが、見返りにドイツから最新のレオパルト戦車を譲ってもらおうと必死です。(ここら辺のコジキ魂はウクライナに通じる物があります。ポーランドも問題国家の一つ)

表向きは「戦闘の大規模化を避ける」とされていますが、一方でアメリカの軍事シンクタンクなどは「戦闘は長期化する」と発表しており、目的を隠そうともしていません。

長らく陰謀論に親しんだ私の目には、開戦前のバイデンの煽りからして、プーチンとのプロレスにしか見えなかった。バイデンがヨボヨボでプロレスとしての面白さは全くありませんでしたが、バイデンのプーチンへの挑発は、あまりに芝居がかり過ぎていました。

 

■ 既存の経済システムを壊す戦争 ■

ウクライナ戦争の影響は世界経済に強く出ています。

 

1)国際決済システムからロシアを締め出す事で、BRICSが新たなシステムを模索し始めた

2)ガスや原油の支払いにルーブルが使える様になり、ペトロダラー(石油決済通貨)としてのドルの地位が揺らいでいる

3)通貨スワップなど中露の繋がりが強化され、インドもアメリカより中露との繋がりを重視し始めた

4)サウジアラビア、アラブ首長国連邦がアメリカから距離を取り始めた

5)原油価格の高騰により世界的にインフレ率が高まった

6)中国は「コロナ対策」を名目として上海を封鎖し、サプライチェーンを意図的に麻痺させ、供給制約によるインフレを加速させている

 

中露はエネルギーとサプライチェーンの寸断でインフレを作り出していますが、アメリカもロシア制裁を各国に強要する事で、これを後押ししている。インフレの影響は、過剰な金融緩和を行て来た国々では顕著で、低金利に慣れ切った市場は、金利上昇によって大崩壊します。ナスダックのハイテック株が30%程度下落していますが、まだまだ序の口です。リーマンショックが発生するまでに、サブプライム危機から2年程が掛かっています。

■ 世界の警察を止めるアメリカ ■

次なる「バブルの崩壊」が始まると、アメリカは世界の裏側の戦争に首を突っ込む余裕を失うはずです。米国債に圧力が掛かると思われるので、軍事予算がマトモに組めなくなる。

アメリカはウクライナ戦争を使ってヨーロッパの中立国をNATO加盟に追い込んでいますが、これはアメリカがヨーロッパから撤退する準備だと私は見ています。アメリカ無き後のヨーロッパの安全保障の枠組みとしてNATOを強化したいのでしょう。

同様にアジアにおいても、海洋アジア諸国の集団安全保障体制が作られる可能性が高い。インドは中露と上海協力機構の一員で、中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、パキスタンと協力関係にある。これは軍事同盟の意味合いも持っているので、海洋アジアのグループからは外れるはずです。

日本は韓国やフィリピン、インドネシアやベトナム、オーストラリアと共に、海洋アジアでNATOの様な集団安全保障体制の一員となって行くでしょう。この動きを加速する為に、アジアでウクライナの様な危機が起きる可能性は高い。朝鮮半島有事、台湾有事、尖閣諸島有事・・・材料には事欠きません。

日本もこれからやって来る「世界的な不況」から逃れる事は出来ません。リーマンショックで自民党が政権を失った時と同様に、危機が起きると自民党は議席を減らすハズです。代わりに、軍事的緊張を背景に日本維新の会が大きく議席を伸ばすでしょう。「中露を許さない」という国民の感情は、いつか来た戦争の道へと国民を駆り立てて行くのかも知れません。