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最後の貸し手・・・日銀

2022-06-17 04:35:09 | 時事/金融危機

■ リスクの鏡・・・ジャンク債 ■

上のグラフはハイイールド債(ジャンク債)ETFの価格チャートです。ハイイールド債は信用力の低い企業の社債の事で、「ジャンク(ゴミ)債」とも呼ばれます。倒産リスクのある会社の社債ですから、当然金利は高く、2000年頃までは10%近い金利が一般的でした。ハイイールド債も他の債権同様に市場で売り買いされます。国債などと同様に中古市場で価格が下がれば債権金利は上昇し、価格が上れば債権金利は下がります。

ハイイールド債はBB格以下の格付けの社債の総称です。先日ソフトバンクの社債の格付けをムーディーズが「Ba3ネガティブ」と発表しまして、ソフトバンクは「勝手な格付けだ」とホームページで抗議しています。ところでBa3とは、どの程度の格付けかと次の図を参考にすると、Ba3はジャンク級(投機的)とされる格付けでも一番下の相当します。

 

■ 「炭鉱のカナリヤ」としてのハイイールド債 ■

ハイイールド債はリスクが高いので、逆に言えばリスクに敏感です。市場は弱い所から崩れますが、暗号通貨やハイイールド債金利は「炭鉱のカナリヤ」の様に、リスクの高まりを教えてくれる。

リーマンショック以降、中央銀行による過剰な資金供給によってハイイールド債金利は下落傾向でしたが、ギリシャ危機、バーナンキショック、FRBのテーパリングや利上開始の際には10%近くまで跳ね上がっています。

皆さんが見逃しがちなのは2018年12月のピークで、この頃は金利上昇によってハイイールド債の新規発行が殆ど停止していました。ジャンク債市場のメインプレーヤーは農林中金で、農林中金がハイイールド債の購入を控えると市場は干上がり金利が急上昇します。実は2018年は金融市場にとっては非常に危険だった年で、FRBが利上げの継続を断念した年です。この時の金利が2.5%。

その後、FRBの利上げ停止で金利は低下しますが、コロナショックで金利が急上昇しました。その後は各国中央銀行の絨毯爆撃の様な緩和政策によって金利は再び低下していました。ところが、FRBの利上げにより、またもやハイイールド債金利は上昇しています。

 

■ アメリカの政策金利2.5%の壁? ■

2018年のハイイールド債市場の混乱は、FRBが政策金利を2.5%にした頃にピークを迎えました。

FRBは2019年まで政策金利を2.5のままにしていますが、裏で量的緩和を拡大した事で、市場への資金提供を拡大して、市場を鎮静化させました。どうやら、ハイイールド債市場など、リスクに敏感な市場は2.5%という政策金利には耐えられないのかも知れません。

ウクライナ戦争以降のインフレ率の上昇で、FRBは上のグラフの様に急激に金利を上げていますが、次の利上げにジャンク債金利が耐えられるのか、微妙な状況と言えます。

■ 最期の貸し手・・・日銀の存在感 ■

市場はFRBの利上げや、量的緩和の縮小ばかり気にしますが、実は市場に大きな影響を与える存在がもう一つあります。それは日銀。

リーマンショックの元となるサブプライムショックは2007年の末に起りましたが、これの引き金を引いたのは2006年3月から実施された日銀のゼロ金利解除(量的緩和の縮小)だと見る人達が居ます。

FRBは2006年から利上げを5.25%で停止していますが、この頃日銀はゼロ金利を維持して、量的緩和も実施していたので、現在同様に「円キャリートレード」が発生していて、金利の安い日本円を調達して、為替市場でドルに替えた後に、アメリカの住宅市場や債券市場に大量の資金が流入していた。ところが日銀が2006年3月に量的緩和を縮小してゼロ金利を解除したので、市場への資金供給量が減り、円キャリートレードにブレーキが掛かった。これによってサブプライム層へのローンの貸し出しが鈍り、アメリカの住宅バブルが終焉を迎えます。

■ 日銀の量的緩和縮小はいつか? ■

日本国内のインフレ率上昇で、日銀も金利を上げるべきだとの声が高まっています。しかし、黒田総裁は異次元緩和を継続すると言い続けています。世間一般には、金利上昇で国債市場が動揺する事が原因と言われていますが、本当の理由は金融市場に与える影響でしょう。

仮に「最後の貸し手」となっている日銀が「利上げに踏み切る」と発表したら、世界の金融市場は大きく動揺するでしょう。為替市場は円安から2007年と同様に急激な円高に振れます。そうなると「金利の安い円」で為替差損が発生するので、円を調達通貨としていた投資家達が、一斉にポジションを解消して円を返そうとします。これはドル売り円買いになるので、為替市場は益々、円高が加速し、金融市場から急激に資金が引き上げられて行きます。

市場にとってFRBの利上げは確かに恐怖ですが、日銀の利上げはもっと怖い・・・。

だから黒田総裁は自分の任期中に世界崩壊の引き金を引きたくは無いと考えているハズです。

 

久々に妄想を垂れ流したら・・・すっきりした!!