■ 金利上昇で拡大する利払い ■
「日銀が将来債務超過になる」という話題をネットで見かける機会が増えました。「日銀は普通の銀行と違い、国債を簿価評価しているので、債務超過にはならない」と私は漠然と思っていましたが、どうやら金利が上昇すると債務超過が起きるらしい。
1)金利上層で日銀当座預金の利付けが増える
2)金利上昇で日銀当座預金の額が増える
3)日銀は国債を高値買いしているので、償還時に実損が既に発生している
4)日銀の収益= 国債を売却して得られる収益から、- 利払費
現在、日銀は年間1.3兆円程度の収益を上げています。これは国庫に納められます。しかし、金利が上昇すると日銀当座預金の金利が上昇して日銀の利払い費が増加します。償還時期を迎える日銀保有の国債の金利は異次元緩和の影響で今後、ゼロに近づいて行きますが、金利が上昇し続ければ日銀の利払い費は増え続ける。要は日銀は経常赤字に陥る。
日銀当座預金の金利を据え置く事でこの事態は防ぐ事は出来ますが、インフレ率の上昇が続くと、金利の付かない日銀当座預金に金融機関は資金を置いておく事が難しくなり、資金流出が起ります。その結果、日銀の利払い費は減りますが、一方で市中に資金が出て行く事でイングレ率が上層し、金利に上昇圧力が掛かるという悪循環が起きる。
そもそも、日銀の役割は「インフレの抑制」で、国民もインフレを嫌いますので、政府も日銀もインフレを放置する事は出来ません。ですから、インフレが進行すれば日銀当座預金の金利を上げざるを得ない。日銀の自己資産は5兆円程度ですから、これを越える負債が発生すれば日銀は債務超過になるらしい。(日銀券は日銀の負債)
11月末の日銀の当座預金残高は490兆円程度。この全てに利付けする訳では有りませんが、仮に全てに利付けされるとすると、金利1%で5兆円の経常赤字が発生する。これ日銀の自己資本に相当します。日銀は金利上昇によって、国債を簿価評価していても債務超過になるのです。
■ 日銀の損失は株価下落でも発生する ■
日銀は大量の日本株ETFや、J-RITEを保有しています。日本株ETFの保有額は50兆円に達しています。これも長期保有すれば問題無いとは言え、10%の株価下落で5兆円の評価損を出す可能性が有る。
そもそも中央銀行が株やJ-RITEを買い支える事自体が異常なのですが、日銀は世界で一番クレージな中央銀行となってしまった。
■ 実質利上げに追い込まれた日銀の未来 ■
黒田総裁は任期終了前に実質的な利上げに追い込まれました。これは長期金利を日銀が不自然に0.25%に留めて置く事に危機感を持ったからです。
金利が上昇する中で、金融機関は低金利過ぎる長期国債を手放したい。日銀は日本国債の購入をこれ以上増やすと、日銀当座預金残高が膨らんで、利払い費リスクが加速する。
分かり切っていた事ですが「異次元緩和」のリスクが金利上昇局面で一気に噴き出した。黒田総裁の後任がなかなか決まりませんが、後始末を任される事が分かっているだけに、やり手が居ないというのが現実では無いか・・・。