■ ドイツの選挙・大連立の解消 ■
<ロイターより引用>
[ベルリン 27日 ロイター] 27日投票のドイツ連邦議会(下院)選挙は、メディア各社の予測で、メルケル首相率いる保守派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が第1党となり、メルケル首相が続投する公算となった。
メルケル首相は、4年にわたる社会民主党(SPD)との「大連立」に終止符を打ち、新たに自由民主党(FDP)との連立を目指す。
中略
FDPと連立を組んだ次期メルケル政権は、減税、ドイツ鉄道などの政府保有株の放出を目指すほか、SPDとの大連立で打ち出した脱原発路線の転換を図るとみられている。
<引用終わり>
■ 脱原発の見直しと、クリーンエネルギー ■
ドイツでは下院選挙の結果、社会民主党(SPD)が連立政権から去る事が決定的となりました。社会民主党(SPD)は「脱原発」を公約に掲げ、その結果太陽光発電やその他のクリーンエネルギーを推進し、国民もそれを支持してきました。
ところが、経済問題が逼迫した事から、ドイツの国民は「経済の回復が最優先」という回答を今回の選挙で示しました。当然、非効率なエネルギーから効率的なエネルギーへの転換、要は脱原発の見直しが成されるはずです。
経済の建て直しを迫られる中、高い電力コストは経済競争力を低下させます。ドイツは表向きは地球温暖化問題の旗振り役ですから、火力発電所を増設する事は出来ません。しかし、現状でも電力不足でフランスから電力を輸入している様に、クリーンエネルギーでは国内の電力需要を賄えません。
さらに、クリーンエネルギーを推進する過程において、「電気の品質」の問題が立ちはだかります。変動の激しい自然エネルギーの発電が増えると、変動を吸収する為のバッファーが必要になります。蓄電設備でこれに対応すれば、膨大なコストが係り、ただでさえ高い電力コストがさらに高くなってしまいます。火力発電をバッファーに用いると、二酸化炭素の排出量が増えてしまします。
いずれにしても、ドイツは遅かれ早かれ、この「クリーンエネルギーの罠」に嵌るはずでした。ですから、今回の選挙結果にエネルギー担当者は胸を撫で下ろしている事でしょう。
■ ドイツのグリーンバブルは弾けるか? ■
ドイツは環境意識の高い国です。開墾と燃料採取の為、18世紀末までに森を切りつくしてしまったドイツは、シュバルツバルト(黒い森)と呼ばれたかつての森林を、国民の力で植林によって再生しています。ヨーロッパは環境先進国である前に、環境破壊先進国だったのです。
ヨーロッパ人の環境意識はその様な歴史の上に培われたものであり、ECOブームに浮かれる日本人とは重みが違います。(日本人の自然を愛する心自体は、ヨーロッパ人以上ですが)だからこそドイツ人は高い電気料金にも我慢して、クリーン・エネルギーを支持してきました。
しかし、社会民主党の敗北は、原発廃止論争を根底から覆す可能性があります。経済性を優先して多少の安全面での犠牲を払っても原発を稼動し続けるならば、クリーン・エンネルギーの需要は下がります。当然、補助金の削減や電力料金の据え置き等で、自然エネルギー自体の採算性の悪さが目立つ形となります。
この時点で、ドイツのグリーン・バブルは弾けます。
■ 地球気温の低下がもたらす温暖化問題自体の変容 ■
2000年以降の地球気温の低下は温暖化論者達を窮地に立たせています。
温暖化の急先鋒だったドイツの学者も、「今後20年は地球は寒冷化し、その後また温暖化に転ずる」などという苦し紛れの発言を余儀なくされています。
既に、温暖化は科学的事象では無く、政治的問題でしかありません。ですから、いつ温暖化問題の旗を降ろすかは政治家達の都合で決まります。温暖化問題が先進国にとってメリットが薄い事が明確になれば、地球気温の低下を理由に温暖化対策事態を止める事も簡単です。
先に鳩山首相が国連で打ち出した、2020年までのCO2の25%削減も、ここら辺の空気を巧み呼んだ発言だったのかもしれません。2020年までに温暖化問題自体が笑い話になっていれば、鳩山さんはCO2削減に実績を上げずとも、「国連総会で野心的な提案をした」という評価が短期で得る事が出来ます。
もしドイツが原発廃止を廃止するとすれば、温暖化問題自体の温度変化を巧みに読んだ結果なのかもしれません。
長期的に見れば、クリーンエネルギーは有望なエネルギーですが、現在必要とされる技術ではありません。さらに、太陽電池などはローテクであり、後発参入してもスケールメリットさえあればシェアーを確立出来る技術です。日本が税金を投入して技術を確立しても、美味しい所は太陽光発電の発電効率の高い国、砂漠が広がるアメリカや中国に持っていかれてしまします。
石油枯渇がいつになるかは、諸説別れますが、今後20年石油時代が続くとすれば、その間に高速増殖炉の技術くらいは確立しているかも知れません。もし、新技術が確立していない場合は、アメリカもヨーロッパも中国も大量に埋蔵される石炭で発電すれば良いのです。石炭は世界に万遍無く存在し、旧ソ連(23.4%)、アメリカ(25.1%)、中国(11.6%)、オーストラリ(9.2%)、インド(7.6%)、ドイツ(6.8%)といった国々は石炭が豊富です。これらの国々は、石油やウランが枯渇しても、当面エネルギーには不自由しません。
困るのは日本ですが、その頃は超高齢化と産業の空洞化ででエネルギー需要自体が激減しているかも知れません。
結局、20年後の世界なんて誰にも予想は出来ないのです。大事なのは予想をしたふりをして、現在とちょと先の事柄を有利運ぶズル賢さです。国際政治なんて、キツネとタヌキの騙しあいです。島国の日本人は正直すぎるのでしょう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます