ツァイ・ミンリャンは『青春神話』(92)とカンヌでパルムドールを受賞した『愛情万歳』(94)のたった2作品で世界の頂点を極めた台湾を代表する監督のひとりだ。しかし、この2本の後、自家薬籠中に陥り迷走を続けることになる。
今回の2作品はともに、いったい何が言いたいのか、何がしたいのかすらわからない出来だ。特に台湾で大ヒットしたというこの『西瓜』は酷い。そのバランス感覚の欠如は痛々しいまでだ。
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『メメント』のクリストファー・ノーランに見事に騙されてしまった。この手口を鮮やかというべきか、それとも「それはないんじゃないの」と呆れるべきかは、かなり微妙なラインだ。
ただ、『メメント』の時のようなあざとさはない。これは確信犯である。これで勝負をしてきた以上、しっかりこの禁じ手込みのカードを受け止めて評価するしかあるまい。(『メメント』に関して僕は、あれはスタイルに逃げた、と理解している。 . . . 本文を読む