過激で挑発的な『西瓜』とは違いこちらはとても分かりやすいストーリーラインを持ち、そこから一歩もはみ出す事もない。しかも、感傷的な映画になら、いくらでも出来る設定にもかかわらず、ツァイ・ミンリャンはそういうことは一切しない。
ピーター・ボクダノビッチの『ラスト・ショー』と同じ話なのだが、30年以上の歳月を経た今、この素材を扱った以上、あの甘く緩いだけの映画の二の舞は踏むはずがない。ラストショー . . . 本文を読む
僕が見たDプロは夫婦の静かな時間を描く3連作となっている。(『可児君の面会日』はあまり静かな時間とは言い難いし、『驟雨』だって妹が大騒ぎしているが、そんなことも含め静かな時間と敢えて認識したい)市井のなんでもない日々をさらりと描いた作品が並ぶ。それを深津篤史は特別何の工夫もなく、そのまんま舞台に乗せていく。単調でつまらないものになり兼ねないのに、当然そうはならない。そっけないくらいにさりげない。 . . . 本文を読む
2部構成、3時間の大作。45年、62年、95年という3つの時代を描く。京城(ソウル)から長崎浦上に戻ってきた4姉妹(と生まれたばかりの弟)の歴史が綴られていく。大掛かりな舞台装置は見事。電動式で回転する円形舞台を中心にして、上手の奥、2階部分といくつものアクティングエリアを用意して、重層的なドラマを見せていく。それらの空間を縦横に使い、いくつものシーンを断片的に見せていくことになる。
松田正 . . . 本文を読む