短編連作のスタイルを成しているようだが、これは長編小説だろう。9編の短編は完全につながる。生まれた家を処分するために帰省した65歳の女性がたったひとりで過ごす故郷での日々のスケッチだ。
もう誰も住まない古い大きな家。そこで、家の整理をしながら過ごす日々。都会からこの村に戻ってきて、高原で過ごす孤独な時間。彼女はすぐに夢を見る。現実と妄想の境目もやがては曖昧なものとなる。時間に沿って話は進む。 . . . 本文を読む
これはちょっと大胆に言うと、『サザエさん』のリアル・シリアス・バージョンだ。今もわずかにだが残っていたかつての日本の大家族が、崩壊していく最後の瞬間を、とある家を舞台にして描いていく。縁側があり、近所の人たちが自由にそこにやってきて、特別な用もないのにお茶すすりながら世間話をしていく。中庭には古い井戸があり、その向かいには離れがある。ここは典型的な昔の古い家だ。
井戸水は、今も汲み出すことが . . . 本文を読む
長く芝居を見ているけど、関西の老舗劇団である関西芸術座の芝居を見るのはたぶん初めてのことだ、と思うのだが、もしかしたら20年くらい前になら見た気もする。というか、何回かは見ているはずなのだが、記憶にはない。関芸のスタジオにも、工芸高校で働いていたとき、仕事の帰りに一度行った気がする。それってやはり、もう20年近く前の話だ。
どうでもいいことを書いてしまった。これだけ書いたら、ついでにもう少し . . . 本文を読む