このタッチに馴染めない人は、この映画が受け入れられないだろう。9・11を描いた『ユナイテッド93』のポール・グリーングラス監督作品。正直言って初めて彼の映画を見た時、ついていけない、と思った。こういう「リアル」なドキュメンタリータッチ、というものになんだか嘘くささを感じたからだ。
だが、彼がその後、マット・デイモン主演のジェイソン・ボーンのシリーズ(2作目と、3作目だ)を手掛けて、そこでも『 . . . 本文を読む
この軽さはなんとも心地よい。そのくせ描いていることは全然軽くはない。その落差がなぜかかなり自然体で拘っているのは読者である僕たちの方ではないか、と思うくらいだ。在日を扱った小説で画期的だと思った金城一紀の『GO』がもう過去の作品でしかない、と思わせるくらいに、この小説のタッチは新しい。
大学を卒業し、新入社員として社会に出た僕が出会ったなんとも独特な魅力を持つ在日コリアンのソンウ。彼ら2 . . . 本文を読む
「男とか女とかは関係なくて、ただハルちゃんが好きだから」とリコは言うけど、彼女自身がまるで男には興味がないのなら、その言葉は額面通りには受け止められない。彼女が女の子だから好きだ、ということになるし、その言葉にはリアリティーもない。
前半はけっこうおもしろかったのだが、後半はただのレズ映画になってしまって、本来ここにあるはずだった普遍性は損なわれる。もちろん普遍性って、これがただの恋愛映画で . . . 本文を読む
平成の秋葉原を颯爽と行く老嬢。彼女はなんとメイド喫茶に入る。そこでオタクの少年に向けて昔、自分がメイドをしていたときの話を、一方的に語り出す。
林芙美子、吉屋信子、永井荷風にインスパイアされた3編から成る連作長編。この作品の主人公であるすみちゃんというおばあちゃんが語る話自体は興味深いのだが、これが中島京子の小説だと思うと、彼女としてはちょっとつまらない。アイデアは悪くはないし、一気に読ませ . . . 本文を読む