あるグループ・カウンセリングの風景がドキュメントされる。これは精神科の治療の一環としてなされているのか、それとももっと別の何かなのか。説明は一切ないから、よくわからない。進行を担当するカウンセラーから、自分の気持ちを客観描写で表現してみんなに語るように言われる。男女6人が、第三者として自分を話す。穏やかな空気で、静かな雰囲気のはずだった。
ひとりの女性が口火を切るように言われる。「さぁ、しゃ . . . 本文を読む
『インポッシブル』を見た前後で、この本を読んだ。あの映画がすごいのは、スペクタクルシーンやサバイバルシーンがふんだんにあるのに、当然目的はそれを見せることではない、という、これまた当然の事実なのだ。あれだけ大変な作業をして津波の被害を再現し、そこに5人家族の再会という、ただ、それだけのドラマしか盛り込まない。てんこ盛りにはしないのである。その選択は正しい。ピンポイントでしか、語れないことがあるの . . . 本文を読む
4つの中編小説は、いずれも画家のもとで寄り添って生きた人たちの姿を描いたものだ。巨匠たちを描くのではなく、彼らのそばで彼らを信じて、見つめ続けた視線。
マティスを見つめた家政婦。そして、彼女のいた時期に、たった一度、彼のもとを訪れたピカソ。ドガのモデルになった踊り子。彼を見つめた女流画家。セザンヌを評価して、応援した画材屋のおやじ。ふたりを見つめたその娘。モネを支えた義理の娘。4人の画家と4 . . . 本文を読む
こんな乱暴な映画はない。ストーリーの作り方もむちゃくちゃだし、何がどうしてどうなったのやら、よくわからないまま話はどんどん進む。もちろん複雑な話ではないから、別に気にする必要はない。しかも、派手なアクションばかりなので、セリフもほとんどないし、ドカーン、ドカーンと爆発して、刀で斬り合いがあって、そんなこんなで、どうでもいい。
だからテンポよく話が展開する、のではない。でも、すごいスピードだ。 . . . 本文を読む
この2つの短編は、いずれも、本来なら長い時間をかけて培っていくものが描かれる。欲望を巡るお話である前者も、愛について語る後者も、それまでの、人生。これからのこと。すべてがそこに包括される。短い時間も長い歳月も同じようにこの30分の芝居に包みこまれ語られる。
姉と妹。友人。三者の関係性を物への執着、お金を通して、描く。3人はあまりに違う別々の存在だが、それなのに、そのことが反対にひとりの人間の . . . 本文を読む