石井裕也監督最新作。『本を編む』『バンクーバーの朝日』でメジャー映画でも成功を収めた彼が再び、マイナーな映画に戻り、これまでの集大成となる傑作を作る。この小さな映画の描く寂しさは今を生きることの痛みだ。
ふたりの男女が東京の町をさすらうように生きる日々を通して、僕たちはこれからどこにむかっていくのかを考えさせられる。傷をなめ合うように寄り添うのではない。ふたりの距 . . . 本文を読む
森絵都『出会いなおし』
最初の3つの物語が素晴らしい。こういうふうに、ものごとを受けとめることが出来るって、凄いと思った。自分らしく生きるって、100人100通りの生き方がある、ってことだけれど、自分はひとりなので、残りの99通りは、実は理解の外。なのに、人は自分の生き方に人の生き方を当てはめようとしてしまう。バカだ。
もちろん、理解の範囲内のこともたくさんある。でも、そうじゃ . . . 本文を読む
これは金哲義お得意の大河ドラマだ。3世代の年代記である。ただ、扱う題材が従来の自分のまわりのことではなく、自分の外の世界に題材をとる。前回は映画館。今回は美術館と、場所がまずある。ここ数年新しい試みとして、この「場所」から始まる、というパターンは興味深い。それが小さなコミュニティであることも、何らかの意味を持つかもしれない。まぁ、これはたまたま映画館であり、今回は美術館であっただけ . . . 本文を読む
「咲田とばこ 劇団ラストステージ」と、チラシの隅に、黒背景に黒字で極力目立たないように書かれてあるのを発見したとき、そのいじらしいほどのひっそり具合に、驚く。(最初は気付かず、見逃していた)なんだが、はせさんらしい。
今回は咲田さんがタイトルロールで、主演。でも、敢えて華々しく彼女に活躍してもらう、わけではない。いつもと変わりなく、でも、今回キャスト数を絞ったぶん . . . 本文を読む
ストーリーがあまりに単純すぎる。しかも単調すぎて想いが迫らない。後半の2部なんて3シーンしかない。ホームレス歌人との対峙。サークルの仲間との語らい、再び今度はみんなで歌人と向き合う。それだけでラストに突入する。しかも横並びの会話のみ。芝居がまるで立体的ではない。表面的なストーリーのみ。テーマばかりが前面に出て、ドラマに奥行きがでないのがつらい。
大熊町から会津若松 . . . 本文を読む
熊切和嘉監督がこういう青春映画を撮る。これは一応高校生の部活の話でもある。このパッケージングは意外だった。
稽古中、木刀で父親の頭を叩き、廃人にしてしまった。その罪の仮借を抱き続け、酒に溺れる男が、剣道を始めたばかりの高校生を通して、再起していくまでが描かれる一応熱血青春活劇。わかりやすい話なのだが、まるで、そのわかりやすさを裏切るようなドラマ運びをする。綾野剛は . . . 本文を読む