この安直なタイトルにはうんざりさせられるが、これがジャック・ドワイヨン監督の新作で、昨年ちゃんと劇場公開もされていたのに、まるで気付かなかった不徳に顔を赤らめる。見つけた瞬間、速攻レンタルしてきた。もちろん、家に着いた瞬間に見た。
なのに、今日までここに書けないでいた。見てからもう3週間くらいになる。つまらなかったわけではない。彼らしい寡黙な映画で、主人公の女はまるで『ポネット』が大人になったようで、そういう意味でも興味深いとも言える。だが、なんだか、この映画に乗れないのだ。激しいセックスシーンがあるから、なんかではない。そういうタイプの映画が嫌いというわけではない。
タイトルそのままの、愛の戦いを描くのだが、そのストレートさに腰が引ける。そういうと、これは過激な映画だと期待する向きもあろうが、そうじゃない。だいたい100分ほどの映画なのに、ふたりがセックスするシーンは最後の20分くらいしかないはずだ。しかも、まるでエロチックではない。喧嘩でもしている感じ。泥だらけのシーンは衛生面で問題あるんじゃないか、とか心配になるし、その後の室内でのシーンなんてなんだかアクロバチックで、サーカスか。
なんなんだぁ、これは、と思わせる。まぁ、まさにラブバトルで、タイトルには偽りはない。だが、そんなものが見たかったわけではないのに、と思う。僕はもっと精神的なドラマを期待した。そして、それまでのシーンは激しいけど、一応内面的な葛藤が描かれてきた。それだけに堰が切れた瞬間からの描写がまるで思いもかけない展開だったのに驚いたのだ。
父親の死から始まる。遺産相続のため、田舎の家に帰ってきた姉妹。別に欲しいものなんかない。ただ、子どもの頃、お前にやる、と言われたピアノをどうしようかと思っていた。なのに、父は彼女だけではなく姉にも同じことを言っていたことを知る。別に欲しいから、というわけではないけど、裏切られた気分になる。父はそんな男だった。屈折した心情が彼女を悩ませる。彼女は無意識裡で父親の愛が欲しかったのだ。
そんな思いを彼女は近くに住む男にぶつける。彼は彼女の挑発には乗らない。静かにひとり暮らしている。なのに、土足で彼女は彼のもとに押し寄せる。彼女を嫌いなわけはない。好きだ。だが、気まぐれな彼女に振り回されたくはない。だから、無視続ける。そうすると、ますます増長する。そんなふたりのやり取りだけで、お話は展開していく。主な登場人物も彼ら2人だけ。姉や近所の住人も少しは登場するけど、彩り程度。
ふたりの愛の物語なのだ。だが、それが見ていてまるでこちらの胸には沁みてこない。どういうことか、と心配になるほどだ。結局僕にはまるでわからない映画だった。