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2022年の10月公開の高橋伴明監督作品。コロナと真正面から向き合う映画である。キネマ旬報監督賞,脚本賞を受賞し、もちろんその年のベストテンにも入っている(3位)。だけど、まるで出来のよくない作品で驚き。
コロナ禍で起きた衝撃的な事件(2020年11月、東京・幡ヶ谷のバス停で寝泊まりしていたホームレスの女性が暴漢に殴り殺されるという出来事)を題材にした作品だが、それをドキュメンタリータッチで描くのではなく、こんな改作をするなんて驚きだ。これは事件を描くのではない。事件を取り上げた創作。しかもまさかの展開に呆れてしまった。彼女が死ななかったというのも、まさかだが、エピローグの国会議事堂爆破シーンはあまりのバカバカしさに苦笑しかない。あれは幻であろうがあまりに安易な描写。
2020年から21年というあの狂騒の時間を背景にして、浮浪者になった女性が、バス停で殺されること。なぜそんなことになったのか。職場を解雇され、再就職も叶わず、住む場所もなく、街を浮遊し、公園のホームレスと過ごす。学生運動時代の三里塚闘争の恨みを今も引き続き抱き続けるテロリストと爆破事件を引き起こす。このあまりに安直な展開には唖然とする。説得力はない。
いろんな問題を取り込み過ぎて,全てにおいて中途半端な感じて、浅い。リアリティがない。こんな安直な映画になったのは残念だ。低予算の作品だけど高橋伴明である。これまで気骨のある映画を作ってきたのにどうしてこんなことになったのか。しかも、この映画は何故か高く評価されている。不思議だ。