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映画・演劇のレビュー

『砂の器』

2015-03-21 23:08:05 | 映画
「午前10時の映画祭」(正確には、「第2回 新・午前10時の映画祭」)で、とういにこの映画を見てしまった。たぶん約40年振りに劇場でちゃんと見たのではないか。(TVでは何度か見ている)『砂の器』は感動的な映画だった。やはり大スクリーンで見て初めてこの作品のよさがわかる。高校生になったばかりの頃だった。(最初は中3の時で)幼い僕はこの映画を見て、映画に目覚めた。公開時には3回見た。何度も見たかった。1日に2度は見た。当時は映画は入れ替えがなかったからだ。(でも、2本立、3本立上映なので、1日に2度が限度だった。)サントラも買った。こちらは繰り返し何度も聞いた。

そこからは一気に映画漬けになった。先日同じ「午前10時の映画祭」で『飢餓海峡』を見たとき、昔見たような感動はなかったけど、もっと甘い映画のはずのこの『砂の器』には今でも同じように感動した。その違いは何なのだろうか。たぶんリアルタイムで見たということが大きいのかもしれない。リバイバルで見た『飢餓海峡』は、すでに高い評価を得た作品だった。しかし、『砂の器』はそうじゃない。同時代の映画だ。

あの時代の気分がちゃんとわかる、というのは大きい。ラスト40分、捜査会議と並行して、交響曲『宿命』の披露演奏会が行われる。そこに重ねるようにして父と子による旅が描かれていく。あの有名なクライマックスが始まった時、震えた。そう、そう、これなのだ。これが当時の僕の琴線に触れた。

いろんなことを思い出す。映画であることの意味。小説では表現できないものがそこにはある。ダイナミックな映像と音楽の競演。そこから胸に迫る感動が生まれる。あの頃、これが映画だ、と思った。そんなふうに純粋に感動出来た日のことを思い出す。そして、今でも、何も考えずにこの映画の世界に浸れたのもうれしい。つまらないアラ探しなんか、どうでもいい。素直に受け止める。そんな自分であれてよかった。

名作を名作だったと確認するために見るのはつまらない、と思い、これまであまりこの「午前10時の映画祭」には行ってなかったのだが、どうしても、もう一度見てみたいと思う映画なら、見たほうがいいと今回改めて思えた。次は『新幹線大爆破』をスクリーンで見よう。あの日の感動をもう一度。


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