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映画・演劇のレビュー

『透明なわたしたち』

2024-11-29 09:35:00 | 映画

藤井道人プロデュース、松本優作監督作品。6話からなる配信ドラマ。今配信ドラマは劇場用映画にはなかった可能性がある。今まではできない作品を作ることができる。TVドラマではなく、映画でもないスケールの作品。トータル上映時間が5時間から8時間くらいの尺は映画では難しいが配信作品なら容易だ。予算も規制もTVより潤沢。作品によっては映画より贅沢なものもある。これもそういう配信作品である。

 
冒頭の女子高生の飛び降り自殺(ネットでリアルタイムで公開してる)から始まり、渋谷スクランブル交差点での無差別殺人までが第1話で描かれる。犯人は誰か、なぜ殺したか、という謎解きではない。犯行に及んだ彼だけでなくあの頃一緒だった6人のそれぞれの今が描かれる。彼と過ごした高校時代の友人たちの話が2話から5話で描かれ、主人公の福原遥が彼と対面する最終話に突入する。
 
高校3年だった日々と8年後の2024年の今が交錯する。富山と東京。18歳と26歳。あの頃抱いた夢は叶わない。彼ら6人は全編暗い顔をしている。救いのない話だけど、その先にはほんの少しの明るい陽射しがある。高校時代の火事。現在の無差別刺殺。ふたつの間にある時間。未来がこんなことになるなんて思いもしなかっただろう。不安はあったが、なんとかなる、と。
 
ゆっくり流れていく日々。事件を追うがドラマチックに展開することはない。あくまでも日々の暮らしからそれを描く。これは事件ものではなく、6人の0年代を生きる若者たちを主人公にした群像劇である。困難な時代において自分たちの生き方を模索して彷徨う姿は傷ましいけど、この先には必ず光があると信じたい。
 
 

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