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ゲキシネを見た。1昨日の深夜たまたまTVで新作歌舞伎『風の谷のナウシカ 前編』を見たのだが、少し見たら寝ようと思ったのに、気づくと3時間最後まで見ていた。こんなのありなのか、と感心した。ド派手で斬新。歌舞伎としてナウシカを取り上げ前後編6時間の作品に仕上げる。しかも、それをノーカットでTVでも放送する。演劇のTV放映はほとんど見ないけど、たまにはいいかも、と思わされた。昨夜後編も放送していたのだけれど、そちらは残念ながら、寝てしまって見逃した。
こんな芝居(歌舞伎だけど)って、いのうえひでのりに演出させたらいいのではないかと、ふと思った。そこで、同じようにド派手な演出で楽しませてくれる劇団新感線を久々に見てみようという気になったのだ。選んだのは2011年版。なんとなく避けていた新感線のほうが凄いのではないか、なんて思った。
劇団新感線は旗揚げ当時から大阪を離れるまでずっと見ていた。とても好きだった。でも有名になってからは、ほとんど見ていない。でもこの『髑髏城の七人』はなぜか初演のときに確か見ている。お話はこんな感じだったけど、もっと短かったし、それほど感心しなかった記憶がある。それは自分のなかで「もう劇団新感線は終わった」という思いがあったからだ。あのとき、あれは自分の知っている新感線ではない、と思ったからだろう。あの時も久々に新感線を見たのだったけど、それが生で見るのは最後になった。『熱海殺人事件』から『炎のハイパーステップ』くらいまでが好きだった。バカバカしいお笑いも悪くはなかった。中島かずきによる作品も好きだった。だけど、それから新感線は見ていない。『髑髏城の七人』は彼らの代表作であると同時に、もう自分の知っている新感線じゃないという、気にさせられ寂しかった。
だから、今回(映像だけど)久々に見たのだ。3時間の長尺なのに、とてもよく来ていて、ナウシカ同様で飽きさせない作品に仕上がっていた。(まぁ、当然だろう。)今なら素直にこういう作品も受け入れられる。この凄まじいエネルギーに圧倒される。
これだけの作品を作り上げるには、どれだけの労力が注ぎこまれたか、と思うと気が遠くなる。昔、オレンジルームや扇町ミュージアムスクエアで見ていたいのうえひでのり作品の熱い想いはここにちゃんと引き継がれている。小劇場からスタートして超大規模の商業演劇として変貌を遂げてもその志は変わらない。お客さんを驚かせること、笑わせること、楽しませること。そんな当たり前のことだ。単純なエンタテインメントであるだけでなく、作り手の熱い想いが作品の起爆剤となっている。凄いな、と素直に感心させられた。
でも、なんだか遠くにいったのだな、と改めて思った。初演を見た時と同じように今回もそう思った。あの時この作品を認めたくはなかったのは、そんな寂しさゆえだったのかもしれない。