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10話からなる短編連作である。タイトル通り、10人の父親たちのお話だ。父と子のこれ以上ささやかにはできないくらいに小さなお話が綴られる。ワン・エピソードはいずれも10分前後。なかには5分くらいの話もある。さりげなさすぎて、驚くほどだ。でもいずれも珠玉の名編ばかりである。あっさりと流していくのに、強く印象に残る。監督は『最愛の夏』『きらめきの季節/美麗時光』のチャン・ツォーチ。ノスタルジックな街並や海辺、田園など台湾の美しい風景を見事に捉え、その中で、子を想う父、父への子からの想いが静かなタッチで綴られていく。
こんなにも短い話である。当然の事として、登場人物も自ずと絞り込まれる。基本は父と子の2人。そこに母、や祖父母といった家族が混じる。それくらいだ。背景になる人物はいても中心には2人だけ。シンプルな構成の中で、一瞬の出来事が描かれる。こんなにも何にもない話なのに、泣かされる。
特にお勧めは、1話、8話、10話だ。1話は、病気になった息子を自転車の後ろに乗せて、近所の診療所まで連れて行く。ただそれだけの話。なのに、これがすばらしい。わざわざ迎えに着た祖父と共に、3人で美しい夕暮れの風景のなか帰っていく姿が心に沁みる。
8話は、海にやってきた4人家族の話。両親が目を離した隙に、子供たちが波に浚われる。父は子供たちを助けるため、心臓が悪いのに、海に飛び込む。無邪気に海で遊ぶ子供たちが少しずつ沖に入っていく姿と、夫婦がケンカしている姿を交互に見せて、緊張を高める。その後の惨事を予感させる。
10話は障害を持った息子の車椅子を押して、動物園にやってくる父の話。なのに、彼が楽しみにしていたキリンがいない。がっかりする。だが、異変はキリンだけではない。気づくと、周囲に誰もいなくなる。2人だけになった動物園。そこにたくさんの動物たちが現れる。檻の中ではなく、歩道を、象が、ライオンが歩いてくる。もちろん、キリンもだ。ここを自由に動物たちが闊歩する。
たった10分程度の短いエピソードの連鎖。それがこんなにも胸に痛い。実は隠しておこうと思ったが、とっておきのエピソードがある。第6話だ。学校に行く高校生の息子を、駅まで送っていく父の姿を描く話だ。このなんでもない話に泣いてしまう。単車の後ろに荷車をつけたもの、息子はその荷車に乗って父に送られていく。駅前でお菓子を買って、プラットホームにいる息子に渡すシーンで泣いた。あんなにもなんでもない場面が心を締め付ける。あまりに素敵すぎて、自分ひとりの宝物にしておきたい。これは、誰にも教えたくない、とっておきのエピソードだ。
いつものことだが、字幕なしで見たので、会話の内容は一切分からない。だが、そんなこと、なんら支障はない。いい映画はいい。ただそれだけだ。
こんなにも短い話である。当然の事として、登場人物も自ずと絞り込まれる。基本は父と子の2人。そこに母、や祖父母といった家族が混じる。それくらいだ。背景になる人物はいても中心には2人だけ。シンプルな構成の中で、一瞬の出来事が描かれる。こんなにも何にもない話なのに、泣かされる。
特にお勧めは、1話、8話、10話だ。1話は、病気になった息子を自転車の後ろに乗せて、近所の診療所まで連れて行く。ただそれだけの話。なのに、これがすばらしい。わざわざ迎えに着た祖父と共に、3人で美しい夕暮れの風景のなか帰っていく姿が心に沁みる。
8話は、海にやってきた4人家族の話。両親が目を離した隙に、子供たちが波に浚われる。父は子供たちを助けるため、心臓が悪いのに、海に飛び込む。無邪気に海で遊ぶ子供たちが少しずつ沖に入っていく姿と、夫婦がケンカしている姿を交互に見せて、緊張を高める。その後の惨事を予感させる。
10話は障害を持った息子の車椅子を押して、動物園にやってくる父の話。なのに、彼が楽しみにしていたキリンがいない。がっかりする。だが、異変はキリンだけではない。気づくと、周囲に誰もいなくなる。2人だけになった動物園。そこにたくさんの動物たちが現れる。檻の中ではなく、歩道を、象が、ライオンが歩いてくる。もちろん、キリンもだ。ここを自由に動物たちが闊歩する。
たった10分程度の短いエピソードの連鎖。それがこんなにも胸に痛い。実は隠しておこうと思ったが、とっておきのエピソードがある。第6話だ。学校に行く高校生の息子を、駅まで送っていく父の姿を描く話だ。このなんでもない話に泣いてしまう。単車の後ろに荷車をつけたもの、息子はその荷車に乗って父に送られていく。駅前でお菓子を買って、プラットホームにいる息子に渡すシーンで泣いた。あんなにもなんでもない場面が心を締め付ける。あまりに素敵すぎて、自分ひとりの宝物にしておきたい。これは、誰にも教えたくない、とっておきのエピソードだ。
いつものことだが、字幕なしで見たので、会話の内容は一切分からない。だが、そんなこと、なんら支障はない。いい映画はいい。ただそれだけだ。