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映画・演劇のレビュー

『テイク・ディス・ワルツ』

2014-04-13 21:13:15 | 映画
 なんて寂しい。人は結局ひとりぼっちなのか。愛する人と結婚して幸せに暮らしているはずなのに、実は、わかりあえない。世の中には自分のことをちゃんとわかってくれる人がいる。まだ、出会ってないだけなのだ。なんて、思うわけもない。夢見る頃を過ぎても、夢見ていたいなんて、もう思わないし。現実は夢のようには美しいわけではない。そんなこと誰もが知っていることだ。だが、この映画の彼女は出逢ってしまう。

 本当か? そんなの幻想でしかない。彼女は彼と出逢ってしまった。これは不倫ものなのか? そうではない。ここに描かれることはすべて彼女の見た妄想なのだ、と断言してしまったならとてもわかりやすい。映画はどうとでも自由にとってもらっても結構、と言う。好きなように見てもらえばいい。明るい日差しの中でお話は展開していくから、ラブコメか、とすら思わせるのだが、よもやそんなことはない。たまたま海外で出逢った男が、帰りの飛行機の中で再会し、方向が同じだからと一緒に帰ってきたなら、なんと自分の家からすぐそこ(というか、向かい)に住んでいた。こんな導入はコメディでしか使わない。偶然というにはあまりに安易で、ふざけている。


 どこにも身の置き場のない彼女のうつろな瞳がこの映画を象徴する。冒頭と終盤に繰り返される彼女がキッチンに立つシーン。たったひとりで、そこにいる。誰のために作るのでもない。これこそが彼女の現実(日常)で、それ以外は空想。そう理解したならわかりやすい。

 映画はどんどん妄想を過激にしていくばかりだ。でも、そのエスカレートをばかばかしいとは思わない。切実な想いがそこには確かにあるからだ。

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