2月15日から21日までの1週間、「これまでの演劇、これからの演劇」をテーマにして「未来の大阪」演劇祭が「通天閣を起点に、まちなかで演劇と遭遇する」企画として開催されていた。はたして、どれだけの人たちがこの大阪で、この1週間、演劇と遭遇しただろうか。
これはとてつもなく壮大で、とんでもなくすごい企画なのである。なのに、大阪が演劇一色に染まることはなかった。それどころか、そんなすごいことが起きていたということすら知らない大阪市民しかいない。それが現実である。出来ることなら大阪の人たちではなく、他府県の人たちが大挙して大阪に押し寄せ、このイベントを盛り上げてくれたなら、きっと大阪市民も、なんだ、なんだ、と興味を持ってくれたかもしれない。このイベントに参加して、目撃するために、海外からも人が来たならいいのに。そんなくらいに、志は高くあれ、と思う。
DIVE(大阪現代舞台芸術協会)が企画、運営した。だが、これがどんなもので、何を目指したのかが、なかなか明確にならず、告知も宣伝も行き届かないまま、開催され終わってしまった。そこが残念でならない。僕がこのイベントの全貌を知ったのは、なんと開催から5日目の金曜日で、彗星マジック公演で貰った公式プログラムを見た時だ。それまでの仮チラ(あれが本チラだと思っていた)では、わからなかった企画意図が見えてくる。なんだか、凄いじゃないか、とそこで思う。でも、それでは遅すぎる。だいたい、僕なんかを驚かせても、なんら意味はない。これは一般の人たちを驚かせて興味を持って足を運んでもらわなくてはなるまい。
この企画をうまくセールスして、行政や企業の賛同を得て、壮大なプロジェクトとして運営され、それによって大阪のイメージアップにつながったなら、大阪の演劇事情も、ここを起点にして変わっていくのではないか。これは本来そういう企画のはずなのだ。
今回参加した4劇団、2団体、計6作品の上演を中心にして、さまざまな関連イベントが連動して行われた。そのすべてを見ることは不可能だけど、1週間演劇三昧して、たくさんのイベントに顔を出し、これを見たなら今の大阪の小劇場演劇のすべてがわかる、なんて「一見さん」が思えるような企画が提示できたのではないか。(少なくとも、あのパンフからは、そういう熱意が伝わってきた)
できることなら、ここに来た観客が大満足して、それぞれの町や国に帰ってくれたならいい。今年見逃した人たちを大いに悔しがらせて、次回こそは、このときに休暇を取って大阪に来る、となればいい。大阪の演劇のことを知りたければ2月に演劇エキスポに行け、そこで上演される作品さえ見たなら、今の大阪の演劇通になれる、みんながそう信じてわざわざこの時期に大阪に来る、これはそんな夢のようなイベントであるべきだったのだ。
なかなか難しい話であることは、重々承知しているし、自分だって、4本芝居を見ただけだから、本当なら偉そうなことは言えないけど、スタッフが力を合わせて、このイベントを盛り上げようとしたのに、十分な動員に至らなかったのが、悔しい(から、こんなことを書いている)。
でも、今回の演劇エキスポ(だいたい、このネーミングからして、僕立ち万博世代は興奮する)を通して、DIVEなら、無理することなく、でも、凄いことができる。そんな可能性を提示してくれた気がする。